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連載

連載100回記念スペシャル対談「新型コロナ緊急事態宣言下 困窮する女性たちを救え!」

ゲスト:小林美穂子

雨宮処凛(作家、活動家)

小林美穂子(つくろい東京ファンドメンバー)

(構成・文/和田靜香)

小林 いろんな人に出会える面白さはあります。大事に思う人が増えるんですよね。で、あわよくば相手からも大事に思ってももらえる。最初は「支援する人・される人」だった関係が何年も経っていくと、それが逆転したりするんですよ。向こうがこっちの面倒見てくれたり心配してくれたりとか、そういう自然な関係になっていくのはすごく楽しいですね。もちろん、自分の価値観とは相容れないことも多々起きます。そんな時に否定してしまいがちですが、いろんなものを「これもヨシ」と受け入れなくちゃならない。でも、それには自分の価値観をどこかに置いてきたり、あるいは壊さなきゃいけない。これまで40何年、50何年かけて積み上げたものを壊すというのは、けっこう痛いんです。だけど、乗り切ったあとにどんどん視界が開けていく。相手以上に自分が楽になるということに気がついた。

雨宮 あと、当事者の人がどんどん元気になっていきますね。やっぱり最初に会う時って、その人の人生で最悪ぐらいの、一番どん底の時じゃないですか。でも、付き合っていくうちに「え、この人、こんな元気だったんだ」とか、「こんなに表情豊かだったんだ」みたいな気づきはすごくありますね。

小林 笑わせてくれたりすると、びっくりしますよね。ただ、やっぱり変わらない人もいます。私たちは相手が自分の期待するような姿に変わることを潜在的に求めがちなんですが、変わらない中でも長く付き合っていくと、また違う面が見えてくる。「変わらなくても、ま、いいや」とだんだん思えてくる。自分の価値観がすべてではないのに、その小さな器に相手を押し込めるのはこちらの欺瞞です。でも、そう簡単に悟ることはできず、ちょっとずつしか成長はできない。葛藤は日々あります。相手に心のどこかでイラついたりする時、自分が試されているんだと感じます。

雨宮 もし自分がめちゃくちゃ借金背負って、何らかの原因で周りの人を全員裏切って一文無しになっても、なんとでもできるという自信は生まれてこないですか。こういう活動をしてきたおかげで自分に「死なないノウハウ」はすごい貯まったな、って思います。何があっても、貧困や経済的理由では絶対に自殺しないぞという自信はありますね。私はフリーランスだからいつ仕事がなくなってもおかしくない、1年後どうなってるか全然分からない。それでも自分がこの問題に関わるようになって、もうどうなっても生きていけるし、逆にそれをネタにできるなって思うようになりました。

小林 たくましい!

「支援する・される」ではなく「互いに支え合う」に

雨宮 こんなデータがあります。貧困問題に取り組む学者らからなる「貧困研究会」が、生活に困った人々から寄せられた「電話相談」のデータ分析をしています。21年2月に発表された「12月の調査結果」では、「今年の2月と比較してどれほどの収入減か」という質問に、フリーランスが平均マイナス12万1000円、自営業がマイナス8万3000円、派遣社員がマイナス8万3000円という回答でした。分析対象は458件です。

小林 そういうデータって、とても貴重ですね。大変さが本当に分かります。

雨宮 なのに、国はこういう調査をしません。細かい実態調査は絶対必要ですよね。私は、今こそ貧困問題についてひっくり返せる時だと思っています。私たちは昨年3月から「緊急ささえあい基金」を設立して寄付金を募集し、「新型コロナ災害緊急アクション」を立ち上げて支援金を拠出しています。そうして20年末までに1700世帯以上に対し、5000万円以上を支援しました。寄付金は1億円近く集まっていて、市民の間に「助け合い」が復権してる感じがします。

小林 それは私も感じています。

雨宮 でも世の中の風潮は二極化もしていて、「自己責任」「自力で生き残らなくてはいけない」という形での淘汰も始まっています。本当に生きるか死ぬかのサバイバルを続けて、追い詰められている人もいます。だから「こっちに来たほうが楽だよ」「こっちに来れば他人を蹴落とし、生きるか死ぬかのサバイバルをずっと続けなくてもいいんだよ」というのを、このコロナ禍の危機を通じて伝えることができればいいなと思って活動をしています。

小林 今、特に被害を受けているのは、元々脆弱な立場にあった人たちですよね。短期契約の仕事を空中ブランコのように渡りながら働くしか選択肢がなかった人は、コロナ禍で仕事が減ったら次のブランコに飛び移れなくて落ちちゃうわけです。そういう人たちが直面している問題の本質を理解し、解決することをしないと、よほど好景気が続かない限りどんどん落ちてしまう。福祉事務所だけをどうこうしても、どうにもならない。貧困問題は教育や労働環境など、社会システムの欠陥が引き起こす問題です。社会的な問題であるにもかかわらず、個人の問題にすり替える社会はあまりに未熟で身勝手で残酷ですよね。「生存」が椅子取りゲームであってはいけない。

雨宮 問題はより複合化して、あらゆる人が考えるべきものになっています。

小林 ええ。この社会システムに疑問を持たずに支えてしまっているのは、この社会に生きる人すべて。私たち一人ひとりに責任はある。知らない誰かの困窮に完全に無関係な人は一人もいない。今こそ、社会というのがどういうものか考え直してもらえたらいいなと思うんです。どういう社会に私たちは生きたいのか? 人は生きてる限り、誰の世話にも迷惑にもならないなんて、あり得ない。みんな助けてもらったり、自分に余裕がある時は助けたりしながら成り立つものでしょ? 税金で支えられる制度もそうで、必要になった人達のためにあるものでしょ? 

雨宮 それは大きな声で言いたいですね。

小林 「自己責任」「自業自得」というつまんない言葉よりも、「お互いさま」という考え方にだんだんシフトしていってくれたらなと、このコロナ禍だからこそ思っています。「みんな一緒に助かろう」という発想を、誰もが持ってほしいですね。

『コロナ禍の東京を駆けるー緊急事態宣言下の困窮者支援日記』稲葉剛・小林美穂子・和田静香編 岩波書店

 

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

つくろい東京ファンドメンバー

小林美穂子

こばやし みほこ

1968年生まれ。居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネーター。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで就労。ホテル業(東京、マレーシア)→事務機器営業(マレーシア)→工業系通訳(栃木)→学生(上海)を経て生活困窮者支援という、ちょっと変わった経歴の持ち主。共著書に『コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日誌』(岩波書店、2020年)。

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