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夫婦別姓に反対したり「家族」を強調するわりには、家族を大切にしてるように見えないという謎

雨宮処凛(作家、活動家)

 そんな日々が1カ月も続けば、「早く死んでくれないかな」と願ってしまうかもしれない。どんなに大切な人であっても、「家族介護」は時にそこまで人を追い詰めてしまうのだ。だからこそ、他人介護が必要だということを、私は難病の人たちとの付き合いから学んできた。

 例えばALSの母親の介護をしていた日本ALS協会元理事の川口有美子さんは、介護を始めて8年目、自分で介護派遣会社を立ち上げている。ALS患者にヘルパーを派遣する会社で、ヘルパーを育てて派遣するほうに回り、母の介護も他人介護にシフト。そうしてどんどんヘルパーを要請することで、仕事のない人に仕事を提供するという雇用創出ができ、家族は介護から解放されるのだ。

 それだけではない。ALSの人たちは、これまで様々な交渉をすることで24時間介護を勝ち取ってきた。そこには多く公費が投入されているので自己負担は少なくて済む。

 そのような取り組みの果てに、ALSの人の中には一人暮らしをする人も増えている。「全身麻痺でどうやって?」と思うかもしれないが、24時間ヘルパーがいるから安心だ。

 実際、舩後議員は議員になる前も今も一人暮らしである。また、ALSは知能には影響がないので、わずかに指などが動けばパソコンを操り、仕事をすることができる。よって、患者の中には自身がヘルパー派遣会社を経営している人も少なくない。舩後さんも議員になる前はそのような形で福祉関係の会社の副社長として経営に関わっていた。

「嘘みたい」と思うだろうが、難病者たちはこのように家族の手を借りずに生き、働き、稼ぐノウハウまで作ってきたのだ。

 その何が利点か。それは「家族に勝手に代弁されない」ことだろう。例えば自力で話すこともできなくなった時、家族しか周りにいなければ、あなたの意思は尊重されるだろうか。

 今、この原稿を読んで、もし一人暮らしをしたいと思った全身麻痺の人がいるとしよう。その思いを周りに伝えても、家族は「いやいやうちの子/親には無理です」と勝手に代弁しない保証はあるだろうか。それどころか、日常の「小さな代弁」によって、あなたの要望は常に歪められていないだろうか。これはあなたが事故や老いによって寝たきりになった時に必ず直面することでもある。しかし、相手が家族ではなくプロであれば、勝手な代弁はしないはずだ。あなたは一人の人間としての意思を尊重される。

 昨年、SMA(脊髄性筋萎縮症)の海老原宏美さんと週刊誌の座談会で話した。その時、彼女は以下のように言っていた。彼女も難病でありながら一人暮らしをしている。話すことはできるが、日常生活のいたるところに介助が必要な車椅子ユーザーだ。

「当事者としても、家族に介護されていたら、あっという間に抑圧されるし、我慢させられます。だから私は家を出たのです。障害者と家族が一緒にいると『利用者』と『ヘルパー』でしかありませんが、離れたら普通の家族になれる。これは大事なことです」(「人工呼吸器、着ける?着けない?『生きている意味』を問わない社会へ」、『週刊金曜日』2020年11月20日)

 本当に家族を大切にするために出した結論が、多くの場合、「家族と離れる」だったこと。そして他人介護のフル活用だったこと。ここには、これからの高齢化社会を生きるヒントも隠されている気がするのだ。

 そんな先駆者たちのノウハウこそ、政治の場で取り上げられるべきことではないか。

 が、この国では選択的夫婦別姓すら認められないままで、しかもその夫婦別姓について、自民党は21年3月10日、男性議員だけで論点を整理することを発表した。

 その後3月25日、別姓に賛成する自民党議員らによって議員連盟が立ち上げられたようだが、一体どうなるのか。しっかり見ていきたいと思っている。

次回は5月4日(火)の予定です。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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