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「競争、疲れた……」中国・寝そべり族出現について、日本の「だめ連」に聞く

雨宮処凛(作家、活動家)

 ちなみに生活費を稼ぐ仕事も厳選している。一つは障害者介助。これは週1日で7時間の夜勤。もう一つは学童保育。1回3時間で週2日。どちらも目の前の人の役に立つ、なくてはならない仕事だ。このように、自分の納得する仕事で働き、週の労働時間は13時間。これくらいの労働時間なら、ストレスなく、仕事も嫌にならずに長く続けられそうだ。

「今の仕事は、やってることもいいことだし労働環境も悪くないからいいですね。だいたい仕事なんて、悪いことが多いですからね。南側から搾取したり、環境も壊してる。消費しない、商品生産しない、労働をしすぎないっていうのが一番エコですからね」


 まったくもってその通りだ。しかし、将来や老後が不安になったりしないのだろうか?

「一回不安モードで考えようとした時期もあったんですけど、結局不安になっても何も変わらないし解決しない(笑)。やっぱり、開き直って楽しくやったほうがいい。それに老後の不安って言っても、いつ死ぬかわかんないし、サラリーマンの人とか、70過ぎたら好きなことしようって思ってるかもしれないけど、それよりも、今好きに生きたほうがいいですよね。だから俺、会社やめてから、人生一度も後悔したことないですよ」

 そんな神長さんに「寝そべり族」が満を持して2021年の中国に出現した感想を聞いてみた。

「納得というか、当然だなって。競争社会、やってられないじゃないですか。いっぱい働いて出世してお金持ちになるのが幸せみたいな感じだけど、そんなのやるのも大変だし、幸せでもなんでもない。競争させられて、人からの評価ばかり気にするっていうのはだめをこじらせてる問題ですよ。あの人より収入多い、タワマンに住んでるとかどうでもいい。それより、生きてる時間をどう過ごすかのほうが問題です。たった一回きりの人生なんだから、資本主義が押し付けてくる常識から抜け出して、もっと自分が楽しんで幸せになること考えたほうがいい。だから寝そべり族みたいなの、もっともっと出てきてほしいですね」

 ちなみに韓国では、韓国版・だめ連というべき「ペクス連合」というグループがある。ペクスとはいわゆるニートのことで、1998年に結成。だめ連とは98年に対談し、『だめ連宣言!』にもその模様が収録されている。そんなペクス連合のチュ・ドッカン氏は私も友人で、コロナ以前はしょっちゅう来日するのでよく一緒に飲んでいた。「ペクス連合」の主張も、少なく稼いで少なく消費する、必ずしも労働しなくていいのでは、というもの。対談では、全世界の「だめ・ペクス連帯」「だめコミンテルン」ができるのではないかと98年の時点で予言されているのだが、23年経って、とうとう中国勢が「寝そべり」に打って出たわけである。


 ということで、なんとか寝そべり族と連絡をとりたいのだが、すでにコンタクトしている人がいるらしいという噂もある。ちょうど私の本の中国での出版も決まったので、中国の人々とともに、そして世界中の「競争から一抜けた」人々とともに、存分に寝そべりたい。

 最後に。『だめ連宣言!』には、著名人らによる以下のメッセージが裏表紙に掲載されている。

「だめ連は、21世紀の当たり前!」(田中美津)、「だめ連は、グローバル・スタンダードだ!」(上野俊哉)。
 やっぱりだめ連って、いろいろ時代を先取りしてたよな。今、改めて思っている。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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