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連載

酒、猫、推し、思想……。生誕半世紀を前にして、自らの依存遍歴を振り返る

雨宮処凛(作家、活動家)

 といっても無理やり入れられたわけではない。集会で、右翼の人は「お前らが生きづらいのは、アメリカと戦後民主主義のせいだ!」と力説。それまで、自分が誰にも必要とされずフリーターで(当時はバイト生活)生きづらいのは全部自分のせいだと思っていたのに、右翼は突然「お前は悪くない」と私を免責してくれたのである。なぜアメリカなのか、戦後民主主義がなんなのか、そこからさっぱりわからなかったけれど、右翼に入るとリストカットが一発で治ったではないか。「右翼療法」だ(これは私にしか効き目がないと思うので誰にもオススメしません)。

 そうして突然「国のために生きる」ことに目覚めた私は2年間、その団体で活動。ある意味、「自分の頭で考えなくていい」2年間は楽だった。が、最初は右翼と左翼の違いすらわからなかったものの、2年もいればぼちぼちわかるようになってくる。そんな過程で「自分は右翼ではないな」と気づき、脱会。そうしたらあっという間にリストカットはぶり返したものの、そんな頃に物書きデビューの話が舞い込む。右翼団体をやめるまでの過程がドキュメンタリー映画になり、本を出さないかという話が来たのだ。

 そうして25歳で1冊目の本を出し、デビュー。この本ではこれまでの自分の恥を晒しまくった。ここまで書いたようなことから中学時代のいじめなど。そうしたら、「自分も同じ経験がある」「同じ生きづらさを抱えている」という声が多く届いたのだ。

 この瞬間が、私が「問題を開いた」時だったと思う。恥を晒すことで、生きづらい人たちと繋がったのだ。繋がりは万能の薬である。

 そうして執筆が、自己治療のような効果をもたらしていく。数年も経つ頃には、リストカットはせずに済むようになっていた。吐き出し口が「書くこと」にシフトしたのだ。

 決定的だったのは、29歳、近所で生後1カ月の子猫を拾ったことだった。このことが私を劇的に変えた。まず、子猫が生きているのが楽しくて嬉しくて仕方ないという様子に衝撃を受けた。それまでの私にとって生きることは苦行だったからだ。なのに小さな子猫は全身で生きる喜びを体現している。

 また、子猫が私を無条件に「信頼している」ことも衝撃だった。私の胸の上で無防備に眠る子猫の姿を見た瞬間、何か大いなるものに許された気がした。この子の信頼にたる人間になろう。生まれて初めて、そんなことを思った。

 そんなふうに猫によって変わりつつあった私だったけれど、物書きになってからはアルコールに長期にわたって依存していた。

 もともとが対人恐怖的なところがあるため、シラフで人と話すのが苦手というのがひとつ。今も仕事の打ち合わせや講演、イベントなんかで話すのは平気だが、誰かとシラフで目的なくお茶を飲むなんてのは苦痛でしかない。

 もうひとつは、不眠だ。

 もともと極度の小心者。物書きになってからは、寝る前、「あれ、間違ってなかったかな?」「あの書き方で大丈夫だろうか」などとすでに送った原稿の内容が気になって眠れないことが多くなった。それがお酒を飲めば眠れる。嫌なことも忘れられる。そんなことから四半世紀近く依存し、飲酒量も増え続けてきたのだが、コロナ禍でさらに増えた時期を経て、急激にお酒に弱くなり(加齢?)、今、量を減らすことに成功しつつある。周りからお酒で身体を壊す人が出てきたことも大きい。楽しく飲み続けるために、以前より適量を心がけている日々だ。

 ということで、今、私が主に依存しているのは猫だ。この、猫という愛らしい生き物に出会い、依存先として「軟着陸」させてもらったことで私は生き延びたと思っている。

 特にいいのは、どれほどもふもふして肉球の匂いを嗅ぐなどしても、借金地獄になったり健康を害したりしないこと。マイナス面といえば「寿命がある」ということだ。

 これまで2匹を看取ってきたが、1匹目の時は精神崩壊の危機だった。リンパ腫と言われてあっという間に亡くなってしまい、自分を責めに責めたのだが、残った1匹の存在に救われた。その子も1年前に亡くしたが、3年にわたる闘病生活がちょうどコロナ禍と重なったことで徹底的に介護ができ、「やれることはすべてやった」という充実感をもって見送ることができた。そうして現在、3匹目の1歳の子と暮らし、甘えさせて頂いている。

 と、ここまで書いて「すっかり落ち着いた感」を出しているが、私は今この瞬間も、自分が1秒後には何かにハマり、すべてを失う可能性があると思っている。だからこそ、危険なものには近づかないようにしている。何かの間違いで有り金全部溶かす可能性がないとも限らない。まさかそんなことするほど愚かじゃないでしょ? と言われても、私は自分を信用していない。魔がさすことなんて誰だってあるのだし、10代の頃の渇望感は、今も私のどこかで燻っている気がして仕方ない。それが満たされたと錯覚した瞬間の多幸感も。その焼け木杭にどうやって火をつけないかが重要なのだ。

 ということで、中村うさぎさんのインタビューから軽い気持ちで振り返ったら、結構ドラマティックな展開になった気がしないでもない。

 あなたも自分の「依存遍歴」、振り返ってみてはどうだろう。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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