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連載

少女誘拐「なぜついていった?」と責める前に

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 保護者だけでなく、教員や児童相談所職員など、虐待や性暴力被害などの支援に関わる専門職ですら、その程度にしか暴力の起きる構造や社会的背景を理解していないことが少なくないのが現状だ。まずは、こうした加害は相手が抵抗できない状況につけ込んで行われることや、被害後のトラウマなど被害の影響を勉強し、理解し、ケアの視点をもって関わる大人が増えることが必要だ。そして、「あなたは悪くない」というメッセージを発し続け、それを当たり前の認識にすると同時に加害者の抑制、被害者のケアの充実に取り組まなければならない。そういう社会にならない限り、被害者は被害を訴えられない。

家出を経験した少女はこう語った

 Colabo(コラボ)で活動する10代のあるメンバーは大阪の少女誘拐事件を知り、小学生の頃から家出を繰り返して生き延びてきた自身の経験に重ねて次のように語った。

「知らない人に会って何されるか分からないけど、もちろん怖いけど、知らない人に対しての怖さよりも、自分はお父さんに対しての怖さの方がでかかったから。お父さんと一緒に暮らすよりは、男の人と体の関係を持って親の支配から逃げる方がよかったから。知ってる人間とか警察とか児相(児童相談所)とかに言えば助けてくれるかもしれないけど、自分の親みたいな人かもしれないし信用できない。知らない人の方が、信用してなくても一生会わないかもしれないし、だから自分が我慢して男の人と会って生活してた。

 家出とか、売春とか好きでやっているという大人が日本に多くいると思うけど、好きでやってる子なんていないんですよ。周りの大人に助けを求めても、もちろん私たちの気持ちなんて分かってくれないし、分かるわけないし。だから、知らない大人に嘘でも同情してもらった方が気持ちは楽になれるから、知らない人に頼っちゃうわけで。本当に知らない大人について行って、殺されるかもしれないけど、親に殺されるよりかは知らない人と一緒にいた方がまし。

 今回の事件も、ついていく女の子が悪いんじゃなくて、女の子がつらい思いをしなきゃいけない環境を作った周りの大人たちが悪いから。ネットでは女の子たちのこと叩く人、多いですけど、お前がその環境になったら、絶対女の子と同じ行動しちゃうと思うし、周りの大人たちに助けを求めて絶対安全な暮らしができるかって言われたらそうじゃないし、何も知らないのに、そんなこと言うなって思います。

(女の子たちを責める声が大きいが)そういうニュースとか見て、経験した人は女の子に共感していると思うし、ネットで叩いてるやつらに怒りが湧いていると思うし。家出だって、家がいたいと思える場所ならしない。お金が稼ぎたいからとか、遊びでやってるとかそんなことじゃなくて、本当に好きでやってる子なんて、一人もいない。大人に寄り添ってほしかったし、話を聞いてくれるだけでもよかった。児相の人たちには家に帰すんじゃなくて、もっと安全な場所に移してほしかった。自分たちがしていることが正しいのかどうかをみんなに振り返ってほしい」

変わらなければならないのは私たち

 彼女は先日、一緒に行った講演で「自分も話したい」と言い、自分の経験を伝えた後、最後にこんなメッセージで締めくくった。

「今日、この場に来ている方の中に、女の子たちを応援したい、そう思っている方がいると思います。その方たちに言います。口だけの応援なんていりません。行動で示してください」

 ネットにかかわらず、家出や性被害について、被害者や子どもたちを責める風潮が日本にはあり、被害者に対するケアも十分に保障されていない。社会の側が、被害者は悪くないということと、被害に気付いたらどうしたらいいかを伝え、被害者を支える取り組みを支援していく必要がある。

 もし、読者のあなたが今回の事件を受けて「なんでそんなことをしちゃったの?」と子どもを責めるような疑問を抱いたのなら、ぜひ、暴力の起きる構造について勉強し、学ぶことから始めてほしい。すでに子どもたちは、書籍で、テレビで、ネットで、さまざまな形で声を上げている。これ以上彼女たちに語らせるのではなく、自分たちで学んでほしい。そういう姿勢を見せる大人が増えてほしい。

 私たちの無知や無理解が、子どもたちを追い詰めている。変わらなければならないのは子どもたちではなく、私たちなのだ。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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