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「メークをしたらお奇麗ですね」発言から差別や性暴力の構造を考える

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 これも女性たちが、言われ続けてきたことだろう。こうした発言をする男性は、自分が相手の容姿を評価できる立場にあると自然に思っていることがまず問題だ。自分よりも若く、自分に言い返したり、意見をしたりしないコントロールできる相手だと思っているからセクハラし、「ほめてるのに」という一言は、そんな自分は悪くないとの言い訳である。

「可愛いね」などと言われて「気持ち悪い」と思うのは、言われた人がその相手から尊重されておらず、尊厳が傷つけられていると直感的に分かるからではないだろうか。その気持ちを大切にしてほしい。自分を責める必要はない。

「被害に遭わないためにどうしたらいいか?」ではなく、加害者について私たちが何を勘違いしているのか、加害者はどういう相手や状況につけ込んで手を出すのか、そのプロセスを明らかにして正しく認識することが必要だ。その認識が隅々まで広まれば加害が起きそうになった時、起きた時、すぐに「それダメですよ」と「当然でしょう」という顔をして言える人が増える。そういう社会にならなければ、加害は減らない。

 そんな社会になったら生きづらい‪(自分が相手を支配する自由がなくなる)だろうと考える加害者は、「なんでもセクハラと言われちゃう」と予防線を張り、「セクハラしちゃったかも」と自覚しているふりをして更なる圧力を掛けた挙句、「うっかり本音が」「綺麗だと思ったから」などと言い訳をする。‬‬‬‬‬‬‬

‪ それは決して「うっかり」やってしまったことではなく、加害者たちは状況をしっかり判断して、相手を見てやっていることを私たちが認識しなくてはならない。‬‬‬‬‬‬‬‬

加害者には「NO」を突き付ける力を

 更に加害者は、軽んじていた相手が実は影響力ある人だと気付いた時、自分の立場が危うくなった時などに「謝っている」「反省している」と手の平を返した態度をとることもある。しかし、それは自分を守るためにしているだけで、やってしまったことを理解して、誠意を込めて謝ったり反省したりしているのとは全く違う。なので周囲の人も、うっかりだまされて「謝れるいい人」「謝っているんだから許してあげたら」などと、加害者を庇うようなことを‪言ってはいけない。それは二次加害だし、加害者にとって都合のいい状況を作ることにつながる。‬‬‬‬‬

 とくに性差別が背景に潜んでいるような状況では、加害的な発言をした人物が自己防衛のためにとった態度に周囲の人が同情し、庇ってしまうようなことは残念ながらよくある。だから私たちは勉強する必要がある。‬‬たとえ周囲の人にそのようなことを言われても、「おかしいな」「嫌だな」「気持ち悪いな」と感じた時は、その気持ちを大切にしていい。

 一人ひとりの無理解から、女性たちは何重にも被害に遭い、傷つけられてきた。繰り返し問題を指摘し続けないといけないのはつらいが、問題を整理して言葉にしていきたい。「あの時、もっとこうできたらよかった」と自分を責めてしまうこともあるけれど、差別や暴力の構造を理解することは、そんな自分を許し、傷つきから回復するためにも大切で、加害者に「NO」を突き付ける力にもなる。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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