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性売買の被害ではなく「性産業への影響」を重視する有識者会議

仁藤夢乃(社会活動家)

 また、当時の日本では買春は男性にとって「普通の日常経験」であり、「男の甲斐性」とさえ受け止められていた。その一方で主婦たちからは、売春婦をほっておくと私の夫がひっかかってしまう、体を売る女性がうちのお父ちゃんをひっかけるから私が困る等の声が上がった。こうした社会状況の下では、買春者を処罰するという発想自体が生まれにくいと角田さんは話す(YouTube動画 :角田由紀子×仁藤夢乃「『知は力』知識を共有し差別に抗うために」)。

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 検討会では、性交類似行為を売春の定義に含めることや、買春処罰の是非について、制度変更が性産業に与える影響が繰り返し論じられた。しかし、その前提となるべき「なぜ現行制度を見直す必要があるのか」ということが、十分に議論されていないようだった。

 性売買の現場では暴力や搾取、人身取引、経済的困窮などが複雑に絡み合い、世界的にはジェンダーに基づく暴力だと認識されている。私たちが性売買をしなくてもよい社会を目指すのか、それともそうした構造に蓋をしたまま性売買を黙認するのかが問われている。

 法改正に伴う影響を検討することは重要だが、それは本来、制度を見直す必要性が確認された後に議論すべき問題だ。検討会は、現行制度で解決できていない問題があるから設けられた。ところが公開された議事録からは、「なぜ制度を変える必要があるのか」よりも、「制度を変えるとどのような支障が生じるのか」の検討に多くの時間が割かれているように読み取れた。

 制度変更による支障ばかりが先に論じられ、制度を変えなければ解決できない問題が後景に退けば、検討会は「制度を見直すための議論」ではなく、「制度を変えない理由を探す議論」の場になってしまう。性産業の維持を重視するばかりで、性売買の被害や搾取の実態から出発しない限り、性売買政策が現実に追いつくことはないだろう。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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