imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

第3回 江川紹子さん(ジャーナリスト)

生まれ変わった“ふたり”にまた出会える日を待っています

加藤由子(動物ライター)

江川紹子(ジャーナリスト/ノンフィクション作家)

加藤 タレとチビが立て続けに逝ってしまい、寂しいですね。
江川 タレが逝ってチビが逝って、その後、すぐにうちの父も亡くなったんです。だから、気持ちの切り替えなんてしばらくできませんでした。喪失感を埋めるには時間がかかります。
加藤 年を重ねていくごとに気持ちの立て直しにも時間がかかります。タレとチビはどうしたんですか?
江川 火葬して、お骨はまだうちにあります。
加藤 どうしますか? その遺骨。
江川 私が死んだら一緒に焼いてもらおうと思っているんです。かかりつけの獣医さんに聞いたのですが、病院に来ている飼い主さんで、自分が死んだ時にきれいなレースの袋にペットの遺骨を入れて遺品の一つとして入れて一緒に焼いてもらうと言っている人がいるというので、それはいいなと。
加藤 名案ですね。確かにお墓は宗派によっては一緒に入れないところがあるけれど、遺品として焼いてしまえばわからないですもんね。故人が大切にしていたものだからってことで。でも、きちんとそれをメモに残しておかないといけないですよね。入れ忘れられたら大変!
江川 そうなんですよ。だから四方八方に言って回らないといけないと思っています。
加藤 1年の間に2匹ともいなくなってしまったら、生活変わりますよね。
江川 はい、変わりました。なんというか、もう……。19年ですから、人生のかなり重要な部分を共に過ごしてきました。猫たちがいなくなり、家に帰ると部屋が冷たいんですよ。
加藤 わかります。私もかつて猫が1匹もいなくなってしまったことがありました。当時は40代で、猫がいなくなったら泊まりで出掛けるのも楽になると思ったのです。でもある日、家に帰って玄関のドアを開けた途端、「あ、家が死んでる。ダメだ」と感じて、すぐに知り合いの動物病院から猫を引き取りました。江川さんはまた猫を飼わないのですか?
江川 私はタレとチビがまたうちに来たくなったら、生まれ変わって来るんじゃないかと思って待っているんです。どちらの猫も「出会っちゃった」という感じだったので、こっちから探しに行くのではなくて、そういう出会いがあったら戻ってきてくれたんだなとまた猫を飼うつもりなんですが、まだ出会いがありません。
加藤 江川さん、5歳くらいの猫とかどうですか? みんな子猫ばっかり欲しがるけど、1歳以上の猫の方が性格も健康状態も全部わかっていて飼いやすいので、私は成猫の引き取りをお勧めしているんです。
江川 5歳くらいからでも馴れるものですか?
加藤 元々人に飼われていた猫ならば馴れるのは問題ないですよ。今うちにいる9歳の猫は、福島の被災猫で、推定5歳で私の所へ来ましたが、べたべた甘えてきます。
江川 そうですか。私は留守にすることも多いので、猫が寂しがらないように飼うならまた2匹と思っています。でも、年齢が近かったタレとチビが相次いで逝ってしまったことを考えると、年齢は離れていた方がいいと思いました。
加藤 江川さんが新しい猫を迎えることがタレやチビにとっても供養になると思うので、ぜひまた猫を飼ってほしいです。
江川 そうですね。タレとチビが毛皮を着替えて早く降りてこないかな~と待っています。
加藤 きっと着替えている最中だと思いますよ。
江川 そうだといいですね。

◆一筆御礼 ~対談を終えて
 前回、江川さんにお会いした時、私は、猫の習性と行動について質問責めにあいました。次つぎと繰り出される質問に必死に答えながら、「なんて論理的な人なんだろう」と思いました。でも今日は少しシットリした雰囲気でした。ほぼ20年間もそばにいた猫たちが消えた暮らしが、まだ受け入れられずにいるのかもしれないという気がしました。初めて飼った猫たちだったから、よけいにそう感じるのでしょう。
 ぜひ、また猫を飼ってほしいと思います。新しい猫を飼うことは、亡くなった猫のことを忘れることには決してなりません。新しく家族になった猫と暮らすことで、チビとタレのことがより理解できると思うからです。チビとタレの個性が改めて見えてくるはずだと思うからです。そのとき、チビとタレが自分にとってどんな存在だったのかが明確になると思います。そしてそれは、新しい猫との付き合いをより豊かにもしてくれるはずです。「十猫十色」であることが、自分がかかわった、それぞれの猫への気持ちを確実に自分の中に根付かせてくれるのだと思っています。

撮影:橋詰かずえ  *の写真は江川紹子さん提供

著者情報

動物ライター

加藤由子

かとう よしこ

動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。

ジャーナリスト/ノンフィクション作家

江川紹子

えがわ しょうこ

1958年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。神奈川新聞社社会部記者を経てフリージャーナリストに。89年に坂本元弁護士一家とその家族が行方不明になって以来、オウム真理教問題とかかわる。95年菊池寛賞を受賞。著書に『人を助ける仕事』(小学館文庫、2004年)、『オウム事件はなぜ起きたか』(新風舎文庫、2006年)、『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書、2009年)、『名張毒ブドウ酒殺人事件六人目の犠牲者』(岩波現代文庫、2011年)ほか多数。(2016.02)

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。