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連載

第4回 竹内薫さん(サイエンス作家)

ツンデレな「シュレ猫」達だから、何でも仕方がないと許せちゃうんですよね。

竹内薫(サイエンス作家)

加藤由子(動物ライター)

ソファは消耗品。猫を追うより人が工夫せよ
加藤 多頭飼育での猫達の関係性はわかりましたが、大変なことってありますか? 例えば災害時の避難のこととか考えていますか? 
竹内 考えています。僕一人の時に避難が必要になったら、背中と前に1匹ずつ、あとは両手に1匹ずつ。
加藤 すごいですね。重そう(笑)。
竹内 妻がいる時だったら、もちろん分担します。
加藤 4匹だと食事も大変そうですね。同時にあげるんですか?
竹内 場所や部屋を分けて同時にあげますが、そんなに大変ではないですよ。コタロウとナナは食事の内容が違うけど、それぞれ自分のごはんを食べていますし。あ、でも、猫トイレは指定できないですよね。頭数+1が理想的だというので、全部で5つ用意してありますが、これは誰専用トイレって決まらないですよね。サイズもいろいろあるのに、みんな小さいトイレばっかり使いたがるし。少しでも汚れていると、ナナはトイレの外にウンチをしてしまうんです。頻繁に掃除しているんですけどね。
加藤 猫って前足が入るとトイレだと認識するみたいで、後ろ足が入ってないのにしちゃうことがあるんです。うちもはみ出ていることがあります。
竹内 なるほど! そういうことか。その猫トイレの奥に仕事部屋があるんですが、ドアを開けてこのリビングに戻ってくる時に、「うわぁ踏んだ」ってことが何度かあって、ウンチ問題は科学的に解決できていません(笑)。あと、コタロウが玄関の僕の靴の上にオシッコをしていたのもショックでした。てっきりモモちゃんだと思ってたけど、とんだぬれぎぬを着せてしまった。
加藤 うちは推定9歳の猫が夜中に鳴くし、枕元でオシッコをしてしまうので、仕方ないから私は枕元にペットシーツを敷いて寝てるんです。
竹内 それは大変。でも、猫と暮らしていると基本的に対策を考えますよね。何か起きたらその都度、対策を取り続けるみたいな。
加藤 そうそう。人間の側が工夫しますね。猫を何とかしようとイライラするよりも、工夫をした方がずっと楽。
竹内 亡くなったニャー君は羽毛布団の上でオシッコしてました。5回くらいクリーニングに出しましたよ。
加藤 羽毛布団にやってしまう猫、いますね。どんなに洗っても買い替えてもダメ。なんか羽毛に反応するみたいですね。だから対策を聞かれたら、「羽毛布団をやめてください」と答えるしかない(笑)。
竹内 そうなんですね。あと爪研ぎ問題もありますね。ソファも何度も替えましたが、やられても惜しくないように良いソファを置くことをやめました。ソファは消耗品ですよ(笑)。あとはバッグ。けっこう良いカメラバッグを買ったんです。でも、なんか爪の引っ掛かり具合がちょうど良かったみたいで……。
加藤 私も高いバッグを衝動買いしたら、次の朝、爪研ぎ器にされていたことがありました。でもそういう時って猫を叱れないんですよね。
竹内 相手が人だったら、ミスを責めちゃったり怒ったりすると思うんですが、猫なら仕方ないかなって(笑)。うちの子どもがテーブルの上に乗ったら叱るけど、猫がテーブルに乗って何かをひっくり返しても叱ることはないですね。
加藤 食器に猫のしっぽが乗っていたら、どけるだけですよね。
竹内 そうそう、普通にどけるだけ(笑)。
加藤 私も人にやられたらけっこう許さない方ですが(笑)、何で猫だと許せるんだろう。子どもは叱っても、猫は叱らない。これって子どもには将来があるからかしら?
竹内 それはありますね。子どものしつけは、家の外に出て人間社会で生きていく上で必要ですが、うちの猫達は一生我が家にいるんだから、僕達が許せばそれでいいかと。爪研ぎは猫の習性でやってるわけで、悪気があるわけじゃないから仕方ないかな~みたいな。諦めですね。
加藤 竹内さんから「諦め」ってフレーズ、今日、何度も聞いたような(笑)。
竹内 夏目漱石の諦観(ていかん)みたいなもんですかね~。
加藤 人間、猫を飼っていると心が広くなるってことですね。
竹内 そうだと思います(笑)。

◆一筆御礼 ~対談を終えて
 高エネルギー物理学を専攻した竹内さんは猫の魅力をどんな言葉で語るのだろうか、私はその話に付いていけるのだろうかという期待と不安を抱えながら対談に臨んだのですが、「そういう時、猫は諦めるんじゃないですかね」という科学者らしからぬ言葉が何度も出てきて、ちょっと驚き。「諦める」も科学なの? 「諦める」を物理学的に解釈するとどうなるのだろう? と思いながら竹内家のシュレ猫達を見ていたら、ゾロりんちゃんがあいさつをしにやってきてくれました。しっぽを立てて去っていくゾロりんちゃんの後ろ姿、黒毛の中にピンク色のお尻の穴がクッキリと浮かび、その物理的な美しさに思わず見とれてしまったのでした。私が理解できる物理学はお尻の穴のコントラストだったようです。物理にもいろいろあるのね、と思った次第。これもシュレ猫の二面性のうちなのかも?

撮影:橋詰かずえ

著者情報

サイエンス作家

竹内薫

たけうち かおる

1960年生まれ。東京大学理学部物理学科卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。科学評論、エッセイ、書評など、作家生活25年で200冊あまりの本を出版しつつ、「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)の司会、「ひるおび!」(TBS系)のコメンテーター、講演などを精力的にこなす。著書に『99.9%は仮説-思いこみで判断しないための考え方』 (光文社、2006年)、『シュレディンガーの哲学する猫』(竹内さなみとの共著、中央公論新社、2008年)、『ねこ耳少女の量子論-萌える最新物理学』(PHP研究所、2009年)、『猫が屋根から降ってくる確率-世の中の出来事は猫と科学で解明できる』(実業之日本社、2014年)、『自分はバカかもしれないと思ったときに読む本』(河出書房新社、2015年)他多数。

動物ライター

加藤由子

かとう よしこ

動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。

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