第12回 森永卓郎さん(経済アナリスト)
加藤 今、空前の猫ブームだと言われ、その経済効果は「ネコノミクス」なんて言われていますが、森永さんは経済アナリストとして、この現象をどのように分析しますか?
森永 私は今の猫ブームは貧困化の象徴だと思っています。犬と猫で大きく違うのは、入手経路やコストですよね。犬の場合はお金を支払ってペットショップから購入するケースが多いけど、一方の猫は7~8割がただでもらったり拾ったりしています。それに犬のほうが育てるのにコストがかかるし、散歩をさせるなどの時間もかかる。だから、家庭の所得が減り、育てる時間もないしお金もないから、犬ほどコストがかからない猫を結果的に選ぶ人が増えてきたというのが、今回の猫ブームの背景にあると私は思います。
加藤 1980年代のバブルのころにも猫ブームと言われていましたが、あのころと今の猫ブームとではどうですか?
森永 バブルのころも豊かになったのは一部の富裕層だけで、庶民はそうでもなかったんですよ。
加藤 ああ、だから私は実感がないのか(笑)。
森永 実感がある人はほんの一握りでしょうね。あのときは家がものすごく高騰したので、庶民は犬が飼えるような家はなかなか入手できなかった。そんなこともあって、飼いやすい猫が人気だったのだと思います。
加藤 なるほど。最近では「癒し」の対象としての猫の存在にも注目が集まっていますね。
森永 そうですね。猫だけは裏切らないというところも大きいですね。
加藤 人間関係も含めた貧困の表れ、ということでしょうか。
森永 そうとも言えますかね。追い詰められたときに猫だけが救い、みたいな。
加藤 でも、森永さんのお宅では猫が救いになっていないような(笑)。
森永 アハハハハ。でも、なつかないなりに、だからかわいいってところもあるんですよ。
加藤 ツンデレだからですか?
森永 抱っこをしたいという思いはあるけれど、私はもう今の状況に慣れてしまったので、べったりいられたら、それはそれでわずらわしくなるかもしれません。
加藤 森永さんにとって猫はどんな存在ですか?
森永 猫は悪女。思うようにならないから楽しいんです。だから、なついたらつまらなくなっちゃうかもしれない。重荷に思っちゃうんじゃないかな。
加藤 重荷ですか(笑)。それ、おもしろい発想ですね。そういうふうに言った人は今までで初めてです。
森永 そうですか?
加藤 どちらかというと、みんなどっぷりはまってしまうんですよね。もっともっと猫と仲良くしたいという人のほうが多いと思いますよ。
森永 へえ~。だから、私は猫とそんなに仲良しじゃないんですけれど、楽しいですよ。ジョーイだって何カ月かに一度は、撫でることができるし(笑)。
加藤 何カ月に一度というところに価値がありそうですね。
森永 コリーはやる気になれば毎日でも触れるかなあ。臆病なクリスは1年に一度、触れるチャンスがあるかどうか。ミックは難しいかな。私に対して常に攻撃態勢ですから(笑)。
加藤 冬になると寒いから、猫が布団の中に入ってきたりして距離が縮まるチャンスなんですけどね。
森永 ミックは私の布団には襲いにしか来ないです(笑)。
加藤 森永さんが襲われることなく、猫たちが足元に寝てくれる日が来ることを私なりに願っております。
◆一筆御礼 ~対談を終えて
いやはや、飼っている猫全員が抱っこできない、撫でられるのも嫌い、という話に遭遇したのは初めてです。ましてや、寝ている飼い主を襲いに来るとは、なんとワイルドな猫たちなのでしょう。最初は、森永さんがかまいすぎるせいで嫌われるのかと思っていたのですが、正真正銘のワイルドさのようです。きっと家が広いせいで猫たちは、外で暮らしていたときの気持ちを切り換える機会がないままなのでしょう。なにしろ「1匹に1部屋ずつの感じ」だと言うのですから。はっきり言って「飼っている」というより、人間のほうが家の中にいることを許してもらっているような状態かも。でも、そのワイルドさのお陰で、猫に悪女的な魅力を感じるのだとしたら、それも素敵な関係だと思います。いずれにしろ私が想像していた「森永さんが猫を抱いてウットリしている図」は存在しませんでした。代わりに頭に浮かんだのは「ややマゾ的な図」なのでした。
撮影:橋詰かずえ
*の写真は森永卓郎さん提供