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連載

鮮やかな冬の木 〜カナメモチ

第91回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 今日は早くから霧がかかっていて静かな朝を迎えました。「光の田園」にある「めいすいの里山」に行ってみましたが、比良山地(ひらさんち)も琵琶湖も見えません。乳白色のベールに覆われた森がとても神秘的です。

霧に包まれためいすいの里山。(撮影:今森元希)

 こんな頃、枯れ色の中に色鮮やかな実をつける木が目につきます。それはカナメモチ。カナメモチは常緑低木で、光の田園界隈に多数自生しています。穏やかな気候を好む樹木で、仰木(おおぎ)の田園地帯が温暖な地域であることを示してくれます。この辺りで冬に葉を茂らせながら赤い実をつける木は、他にナナミノキなどがあります。照葉樹の森をつくる仲間ですが、冬を明るくしてくれる植物なので庭木としても人気があります。
 里山再生をしているめいすいの里山にもカナメモチがあります。ここは40年以上放置され荒れていた場所で、一時的に杉を植林されたこともあったようですが、その後、管理されずに竹などが入り込み、まるでブッシュ(やぶ)のような状態でした。やむを得ずリセットすることにして、雑木林をつくるために多くの樹木を一旦伐採して整理しました。
 管理されていない杉などは伐採すると再生しませんが、広葉樹は伐採しても死ぬことはなく萌芽(ほうが)します。整備して8年でようやく、広葉樹の木々が良い形に育ってきました。写真の木は再生したカナメモチです。日当たりがよくなったので実がいっぱいなっています。赤い実は鳥たちも大好物なので、きっと毎日食べに来ているはずです。

めいすいの里山のカナメモチの木。(撮影:今森元希)

赤い実は鳥たちも大好き。(撮影:今森元希)

 ところで、カナメモチの仲間には「カナメの木」と呼ばれ生垣に使われているものがあります。これはセイヨウカナメモチという園芸種です。自生種のカナメモチは若葉が赤色になるのですが、園芸種の方はもっと派手な色彩で、紅色といったほうがよいかもしれません。生垣は剪定が頻繁に行われるため常に新芽を吹き出し、木全体が赤色に染まります。鮮やかな垣根をつくってくれるのでとても人気があります。ただし、温暖地域を好むので山地や積雪の多いところでは、なかなか根付いてくれません。                           
 私の父親の里が長野県なのですが、そこではカナメの木を何度植えても枯れてしまうそうで、その苦労話を語っていたのを思い出します。土地に合った植物を植えればよいのにと、子供心に思ったものですが、困難なものほど欲しくなるものなのですね。最近は、寒さに強い苗が出回るようになったようで、雪の多い琵琶湖の北部地域でもまれに美しいカナメの木を見かけるようになり、赤い葉が冬の生垣を華やかに彩ってくれています。

広葉樹が育ってきためいすいの里山。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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