この国で、「女子」でいることはかなりしんどい。その1
雨宮 最近、財務省の福田事務次官やTOKIO山口達也メンバーの問題、自民党の加藤とかいう議員が「必ず3人以上の子どもを産み育てろ。結婚しなくて子どももいなかったら、人様の子どもの税金で老人ホームに入ることになるんだぞ」という発言をしたり――いろんなセクハラ案件があるじゃないですか? その中で、私が微妙に気になってるのが、文科大臣が通っていた〈セクシー個室ヨガ〉!
北原 私も気になってる。
雨宮 あれを見てね、思い出したのが、田房さんの書いた本『男しか行けない場所に女が行ってきました』に出てきたセクシー〈密着型理髪店〉なんです。あの〈セクシー個室ヨガ〉は、経営者の人が元AV女優ではないかとか一部で報道された。それに対して、「元グラビア(アイドル)だし、そう報道されること自体がセクハラで職業差別だ」って経営者の女性が反論していたじゃないですか。
でも一方で、自分たちの美を商品として売り出している感じもビンビンにしていて、ああいう綺麗な女性からそうされてしまうと、何て言えばいいんだろう? ……と思いました。
田房 私が取材した〈密着型理髪店〉はもう、なくなってしまったんです。ミニスカート穿いて長い髪を垂らして、細い眼鏡かけた女教師みたいな格好をしてる女性が理髪店にいる。とにかく理髪店としておかしい風景なんですよ。
雨宮 おかしいよね、明らかに。
田房 衝立があって、でっかい鏡があって。髪を洗ったりとか、切ったりする時に、ミニスカート姿がチラチラ見えたり、おっぱいがお客さんにくっつきそうな感じになったりする。私、その当時、いろんなフーゾク店に取材に行っていたのですが、そういう話を男の友達とか知り合いの人に話すと、この〈密着型理髪店〉はみんなすごく食いついてきて、「メッチャ行きたい」って言うんですよ。
そこは、ただ世間話をするカウンセリングコースというのもあって、1000円で10分とか、お店の一角で話をするんです。カントリーマアムというお菓子やQoo(クー)っていう子どもの好きなジュースが出てくる。
雨宮 切ないですよね。というか、みんな茶番じゃないですか。「いや、髪切ってるだけですよ」っていう体裁で、性的な何かを期待するわけでしょう。で、田房さんがこの本で書いているように、男性はみんなキョトンとした顔してやってくる!
田房 そう! 「ここ、普通の理髪店ですよね、あれっ、あれっ」みたいな感じを装いながら、ひっきりなしにお客がやってくる。
雨宮 確信犯なのにね。男ばっかりでしょう?
田房 そう。
雨宮 だから、〈セクシー個室ヨガ〉の報道があった時に、あの文科大臣もたぶん同じようにキョトンとした感じで通っていたのではないかと。個室ヨガで1対1だけど、ヨガやってるだけですよ~と言い訳している感じが、なんかもやもやするというか。
田房 その〈密着型理髪店〉で働く女の子に聞いたんだけど、そこは男性の経営者がキャバクラや理髪店から女の子を引き抜いてきて作ったお店でした。「3倍の給料を払います」という感じで。だから理髪師とキャバクラ出身の人の区別が、見ただけではっきりと分かるくらいなんです。私のことを担当してくれた女の子は、理髪師でハサミとかカミソリが持てるんだけど、それでもミニスカートにサイズ小さめのワイシャツは着なきゃいけない。その子は「お給料はいいけど、つらい……」って感じでした。
でも、その〈セクシー個室ヨガ〉は女性が経営してるんですよね。そこは、〈密着型理髪店〉とはちょっと違うのかな?
雨宮 〈密着型理髪店〉も〈セクシー個室ヨガ〉も、フーゾクでもないしキャバクラでもない。それはその通りだと思います。ただ、一方でね、本来提供しているサービスに加えて、女の子とLINEでメッセージ交換とかできますよ、といったことを売りにする場合がある。それで、お客からのストーカー被害に遭った場合は、店は責任を負わない、労働者として守られていない。なんか曖昧にして、「そういう種類のサービスではないですよ」としらばっくれて、結局働く女性が大きなリスクを負う可能性が高い。そういう曖昧なグレーの部分が際限なく広がって、全部女性の自己責任になるんですよ。風営法に取り締まられないような、水商売とも性産業とも言えないところが、危ないと思いませんか?
北原 風営法によるフーゾク産業でも、基本的には女性の自己責任とされているんですよね。いわゆる「本番」と言われている性交は、自由恋愛の範囲でどうぞ、として運営されている。どんな所でも、男は、「デリヘルって、ただのマッサージじゃないんですか、キョトン? え、ソープランドってお風呂屋さんだよね? なのにセックスできるの? キョトン?」という、建前と本音、ダブルスタンダードで、女をすごく上手に搾取している。でも、基本的に最終的に何かあった時には、全て責任を取らされるのは男じゃなくて女なの。
雨宮 今のフーゾクも「キョトン」ですよね。ソープランドもね、そんなつもりじゃなかったみたいにね、言えちゃいますもんね、男性はね。
北原 (日本の社会は)どこまでも男の人に甘い、性に関して甘いよね。だけど、男の人もこれでほんとうに幸福なんですか? こんな文化でいいんですか? って聞きたいの。さっきの話に戻ると、大臣が公用車で〈セクシー個室ヨガ〉に行くわけでしょ。 そんな人が大臣でいいんですか。
田房 虚がすごいよね。
北原 虚がすごい。あまりにも空、ほんとに。
*「この国で、女子でいることはかなりしんどい。その2」につづく。