性知識イミダス:性欲、セックス、オーガズムなどに関する"ちまたの噂"は本当か?専門家が検証!
イミダス編
(構成・文/加藤裕子)
小堀 性欲が発露する対象にも個人差があり、中には1回セックスしたらその相手にはもう性欲を感じないという極端なケースも見られます。また、結婚や出産を経て家族の一員という位置づけになると、相手に性欲を感じなくなってしまう夫婦は珍しくありません。こうした事例を簡単に解決できるかというと、なかなかそうはいかないと言わざるを得ないでしょう。
セックスに関する悩みで、勃起障害であればED治療薬を使うなどの方法を取れますし、鬱病や、脳の下垂体機能低下症等の病気が原因の場合は、まず病気の治療をすることになりますが、性欲が湧かないというケースは難しい。要は、お腹が空いていないときに目の前にステーキをポンと出されても食べたくない、そういう状況で、食べたくさせることはできるのか、という話なんです。
亜鉛が多い食べ物が性欲の喚起に効く、などと言われますが、たしかに亜鉛自体は身体にいいでしょうし、亜鉛欠乏症に由来する男性不妊症の患者さんは摂取したほうがいいということはあります。ただ、亜鉛をたくさん摂ったからといって、ものすごく性欲が出るということはありません。他にも「筋トレがいい」「ストレスを減らすと良い」といった説も聞きますが、こうした生活習慣に関することは健康にはいいとしても、それをやることが性欲に直結するわけではありません。
セックスは相手がいるものなので、セックスの問題を考えるときに大事なのは、治すというより、むしろお互いの考え方を一番良い形にしていくにはどうすればいいか、ということだと思います。たとえば、どちらか一方はセックスしたいけれども相手はそうでもないというとき、それまでの関係性もありますから、したいほうがマスターベーションで解消すればいい、と単純に言えないところがあります。また、目的がセックスそのものではなく子どもが欲しいということであれば、セックス以外で子どもを授かるための方法を提示することも可能です。
ふたりで解決できずに悩んでいるなら、我々セックスセラピストが相談に乗ることもできますし、お互いに納得できる方向をみつけていけるといいですね。
⑥“テストステロンを増やせば性欲は復活する”
――中高年になると、男性に多い性ホルモンの一種であるテストステロン(いわゆる「男性ホルモン」)の分泌量が低下しますが、中高年男性が若い頃のように性欲を高めたいなら、テストステロン補充療法は有効なのでしょうか。
小堀 テストステロンは、男性だけではなく女性にもあります。よくテストステロンが多いと性欲が強いなどと言いますが、テストステロンの分泌量と性欲には相関関係がありません。つまり、テストステロンが多ければ多いほど、性欲が出るわけではなく、勃起ができるわけでもないのです。ちなみに、下垂体や精巣の病気などが原因で、テストステロンがゼロだと性欲がなくなり、勃起はできなくなります。しかし、必要最低限の量のテストステロンが分泌できていれば、勃起をすることもできて、普通にセックスはできます。
確かに、男性の場合は加齢とともにテストステロンの分泌量がなだらかに減少し、勃起力、射精力も衰えていくので、年をとって性欲が衰えたと感じる、というケースはあるでしょう。だからといって、テストステロンを補充すれば性欲が復活するかは、また別の話です。結局、セックスはパートナーあってのものなので、相手に性欲を感じるかどうかはケースバイケースということになるでしょう。
⑦“最近、若い男性の中で草食男子が増えている”
――最近の若い男性は恋愛やセックスにあまり興味を持たない傾向がある、つまり「草食男子」化していると言いますが、事実でしょうか?
小堀 そういう話をよく聞きますが、本当に草食男子が増えているのかどうか、根拠も曖昧ですし、印象論の域を出ない説だと思います。もし事実だとしても、単に身体面だけではなく、失敗を嫌う空気やコミュニケーション能力不足、娯楽の多様化、あるいは経済的に余裕がなくて子どもがつくれないといった社会的背景など、さまざまな要因が関係しているのではないでしょうか。
そもそも、日本人はもとからセックスしたい欲望が薄い民族だと言えます。これにはさまざまなデータがあって、欧米はもちろん他のアジアの国々と比べても日本人のセックスの回数は少ないです。また、前立腺がんの手術をするときに術後にセックスができるかどうか不安だと答える割合も、欧米人が非常に高いのに対し、日本人はきわめて低い。勃起機能に関係する神経を温存しても予後は変わらないのですが、「残してほしい」と希望する人はあまりいませんし、妻のほうが「切ってください」と言うことも多いですね。
なぜ日本人のセックスの回数が少ないのかということについては、親子が川の字で寝る習慣や、狭い住宅環境が影響しているのではないかということが言われています。お互いにセックスしなくても問題ないと考えているカップルは、それはそれで幸せということなのだと思います。

⑦“セックスが痛くてもしょうがない”
――女性にとって、挿入されると痛みを感じる「性交痛」があると、セックスを楽しむことは難しいと思います。潤滑ゼリーなどいろいろとグッズもあるようですが、どうすれば「痛くないセックス」にすることができるのでしょうか。
早乙女 日常的にホルモン分泌量の変化が少ない男性と違い、女性の体調には月経周期によるホルモン変動が影響します。月経直前の黄体期はプロゲステロンの影響が強く、腟が潤いにくいので、セックスに慣れていないカップルが初めてセックスするときは黄体期を避けた方が良いと思います。一方、腟が潤いやすいのは、エストロゲン分泌が多い月経終了後です。潤滑ゼリーを使うという方法もありますが、身体が反応しないときはあまり役に立ちません。
性交痛が起こる原因のひとつに、少し濡れてきたくらいの段階で挿入されることで女性が痛みを感じて、性的な気分が下がり、腟が乾いてしまうということが挙げられます。なぜこのようなことになるかは、「性的反応の4段階」を知っていると参考になるでしょう。これは、1950年代にアメリカの研究者マスターズとジョンソンが行った研究で、人間が性的刺激を受けたときどのような反応を示すか、600人のボランティアの男女を対象に実験を行ったものです。これにより、性反応は性的興奮を覚える「興奮期」、興奮が高まった「高原(平坦)期」、「オルガズム期」、興奮が冷めていく「消退(回復)期」の4段階に分かれるとし、それぞれの段階でどのような変化が身体に起こっているのかが示されました。女性がまだ「興奮期」の段階で挿入すると、先ほど述べたような状況になりやすくなります。
明確に線引きするのは難しいですが、「興奮期」と「高原期」の違いを一言で言えば、理性が働くかどうか、というところかもしれません。「明日の朝は早く起きないと」「仕事であれをやっておかなければ」などの考えが頭をよぎるのであれば、それはまだ「興奮期」だということです。男性も「高原期」に入る前に何かの拍子でスーッと醒めてしまい、セックスできなくなるということはあるでしょうし、性欲があっても、体調次第で勃たない、濡れない場合もあります。女性が「高原期」に入っているかどうかは、見た目からはわかりませんから、女性は自分から「まだ」「痛い」等の意思表示をすることが大事です。
性交痛の原因には治療が必要なケースもあります。また、そもそもセックスに興味がないアセクシャルという性的指向が判明することもあります。気になる場合は、性機能外来などで性の専門家による診察を受けることも、ひとつの解決策です。
⑧“オーガズムに達しない女性はセックスに満足していない”
――男性は射精すればオーガズムを感じられますが、女性はいつもオーガズムに達することができるとは限りません。また、女性がオーガズムを得るための方法もはっきりとせず、オーガズムとは何かがわからない女性もいます。女性がオーガズムを得るためには何をすればいいのでしょうか。