性知識イミダス:女性特有の病気①婦人科系疾患について知ろう(基礎知識編)
イミダス編
(構成・文/加藤裕子)
特徴:最も患者が多いのは30代後半から40代で、20~30代の若い女性にも増えている。セックスで感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因で子宮頸部(けいぶ)にがんが発生する。HPVの感染から5~10年ほどでがん化すると考えられている。なお、女性が生涯でHPVに感染する割合は全女性の80%以上と言われ、性行動にかかわらず、感染自体は特別なことではない。
がんになる前の状態(異形成)ではほとんど症状がなく、20歳以上の女性が対象の子宮頸がん検診による早期発見が重要となる。子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんであるため、検診で見つけやすく、早期に治療すれば予後は良好である。予防には子宮頸がんワクチンが有効で、公費で受けられる「サーバリックス」(商品名、以下同)(2価HPVワクチン)、「ガーダシル」(4価HPVワクチン)で子宮頸がんの60~70%が予防できる。より効果が高い「シルガード9」(9価HPVワクチン)は90%以上の予防効果があると言われるが、現時点では自費での接種となる(2022年3月時点、公費接種については厚生労働省が検討中)。一時、子宮頸がんワクチン接種後に手足の動かしにくさや不随意運動(からだの一部が勝手に動いてしまう症状)など多様な症状が表れるとされ、調査が行われた結果、接種との直接の因果関係は証明されなかった。接種時の痛みや周囲の環境のストレスなどが体調不良の要因になっている可能性があり(ワクチン接種ストレス関連反応)、支援診療体制を整備している。なお、ワクチンを接種していても、定期的に検診を受けることが必要である。
症状:初期はほとんど症状がない。進行すると、おりもの(帯下〈たいげ〉)の増加などの異常、不正出血、下腹部痛などが見られるようになる。なお、性成熟期の女性に多く見られる子宮腟部びらん(腟〈ちつ〉にただれのように見える場所がある状態)は病気ではないが、子宮頸がんの初期であることもあり、不正出血など症状が出たら早めに検査を受けることが望ましい。
治療:早期に発見した場合は、円錐切除術をおこなうことで子宮を温存することができる。進行すると子宮全摘手術が基本となり、必要に応じて放射線治療、化学療法が行われる。妊娠を希望する場合、 がんの進行度合いが初期であれば子宮を温存しての手術 (広汎子宮頸部摘出術)を検討するが、子宮頸部が切除されるため、流産や早産のリスクに注意が必要となる。
子宮体がん
【こんな悩みがある人は要注意!】不正出血/色のついたおりもの/下腹部痛 など
特徴:子宮体部(たいぶ)にできるがん。特に内膜に腫瘍ができる子宮内膜がんが最も多い。近年増加傾向にある。更年期以降の50~60代の女性に多いが、最近では30代の患者も見られる。不正出血があるときは年齢にかかわらず検査を受けることが望ましい。I型とⅡ型があり、子宮体がんの80%を占めるI型はエストロゲンの過剰分泌が原因と言われ、妊娠・出産経験がない(あるいは少ない)、肥満、糖尿病、高血圧、内膜増殖症、月経不順(無排卵性周期症)、エストロゲン製剤のみのホルモン療法を受けている人はリスクが高くなる。初期のがんで転移していなければ、手術で80%以上の患者の治癒が期待できるため、予後は比較的良好である。Ⅱ型は高齢者に多く、エストロゲンとは関係なく発生し、悪性度が高く進行が早いため、早期発見が重要である。
症状:不正出血、色(褐色)のついたおりもの、 下腹部痛、進行した場合は腹部膨満感など。
治療:基本は子宮摘出手術で、卵管、卵巣も切除することが多い。がんの再発や進行具合に応じて、化学療法、放射線療法が行われる。妊娠を希望する場合は、がんのタイプによっては、子宮を摘出せず、ホルモン療法も検討できる。
卵巣がん(卵巣悪性腫瘍)
【こんな悩みがある人は要注意!】腹部膨満感/下腹部痛/頻尿 など
特徴:卵巣にできる腫瘍のうち悪性の卵巣がんの多くは、主に40~60代女性が罹患する上皮性卵巣がんである。卵巣がんは「サイレントキャンサー(沈黙のがん)」と呼ばれ、初期は自覚症状がない。そのため発見されたときには、がんが進行していることも多い。有効な検診・予防法はなく、腹部膨満感や下腹部腫れなどの症状があるときの早期受診が非常に大切となる。家族に卵巣がんにかかった人がいる場合はリスクが上がると言われており、婦人科での定期的な検査を相談するとよい。
症状:初期は無症状。腫瘍が大きくなると、腹部膨満感、下腹部痛、頻尿などが見られる。
治療:手術と化学療法が行われる。妊娠を希望する場合は、片方の卵巣を残すことが可能かどうか、がんの状態に合わせて検討する。
卵巣出血
【こんな悩みがある人は要注意!】突然の激しい腹痛 など
特徴:排卵やなんらかの外的刺激により卵巣にできた傷から出血し、血液が腹腔内にたまる病気。若い女性に多く見られるが、排卵がある年齢の女性には誰でも起こりうる。月経前の黄体期に起こりやすく、セックス、不妊治療での採卵や卵巣手術、血液凝固異常なども原因となる。
症状:突然の激しい腹痛、吐き気、冷や汗など。出血量が多いと血圧が低下しショック症状を起こすこともある。
治療:安静、鎮痛薬投与などの対処療法を行い、血液を止めて、たまった血液が自然に吸収されるようにする。出血量がひどく多い場合は手術で止血を行う。
卵巣機能不全
【こんな悩みがある人は要注意!】無月経/月経不順/更年期症状/不妊症 など
特徴:なんらかの原因で卵巣がうまくはたらかず、女性ホルモンが分泌されなくなり、無月経となる病気。続発性無月経(これまであった月経が3カ月以上止まっている)は、過度のダイエット、極度の肥満、激しい運動や強いストレスなどが原因になる。。また、抗がん剤や膠原病(こうげんびょう)の治療薬、卵巣がん手術など治療が原因で起こることもある。
生まれつき卵子の数が少ないターナー症候群等の遺伝疾患などが原因の原発性卵巣機能不全は、思春期になっても第二次性徴が現れない、子宮が成熟しにくい、骨粗鬆症になりやすいなどの特徴がある。原発性卵巣機能不全におけるこれら症状の進行を防ぐため、15歳までに初経がない場合は早めに婦人科を受診することが望ましい。続発性、原発性にかかわらず、卵巣機能不全を1年以上放置すると治療が困難になるため、早めの対処が鍵となる。妊娠を望む場合は、卵子凍結等も含めた不妊治療が必要になることもある。
症状:月経不順から無月経に至る。大人の場合は更年期症状が起こる。
治療:ホルモン療法。LEP。漢方薬など。過度なダイエット等が原因の場合は生活習慣の見直しを行う。骨粗鬆症予防のためにカルシウム、ビタミンDの摂取も重要となる。
多嚢胞性卵巣症候群
【こんな悩みがある人は要注意!】無月経/稀発月経/不妊症 など
特徴:内分泌疾患のひとつで、ひとつの卵巣に小さな嚢胞(卵胞)が10個以上発生して卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵しないなどの排卵障害を起こす。なんらかの原因により性ホルモンの分泌がアンバランスになることで、初経時から稀発(きはつ)月経など月経周期の異常が続いたり、男性ホルモンや、脳下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)の値が高く出たりする。生殖年齢女性の5~8%に存在し、しばしば不妊症がきっかけで見つかる。肥満は病気を悪化させる原因になる。
症状:無月経、稀発月経など月経異常。多毛、肥満など。
治療:肥満がある場合は、減量など生活習慣の改善が必要となる。ホルモン療法が基本となり、LEPが併用されることもある。妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤を併用するなどして排卵を支援する。
子宮頸管ポリープ
【こんな悩みがある人は要注意!】不正出血/膿のようなおりもの など
特徴:30〜40代に多く見られる、子宮頸管の粘膜が増殖してできる良性の腫瘍。感染症や女性ホルモンなどが原因と考えられているが、はっきりとはわかっていない。まれに悪性化するため、大きくなるときは切除して検査することもある。
症状:自覚症状はほとんどない。不正出血が出ることや、ポリープによって感染症が起こると膿(うみ)のようなおりものが出ることもある。
治療:自覚症状がなければそのまま様子を見る。不正出血やおりもの異常など症状がある場合は、ポリープを切除する。