imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

性知識イミダス:DSD(性分化疾患)について知ろう(前編)~ヒトの性別はどう決まる?「性分化」の複雑な仕組み

イミダス編

(構成・文/加藤裕子)

 まず男性型の形成について説明しましょう。第二のステップで精巣の発生に伴い出現したセルトリ細胞は、AMHというホルモンを分泌します。このAMHがミュラー管を退縮させるため、女性型内性器が発達しないという状態になります。一方で、ライディッヒ細胞からはテストステロンという男性ホルモンの一種が分泌され、ウォルフ管を発達させて男性型内性器を形成します。
 男性型内性器の形成後、テストステロンが、より作用の強いジヒドロテストステロンに変換されて局所に働くことにより、外性器は男性型(陰茎、陰嚢いんのう、前立腺)になります。

 男性ホルモンの産生や作用の過程ではさまざまな遺伝子がかかわっており、それらの遺伝子の変化等が「完全型アンドロゲン不応症(完全型AIS)」などのDSDの原因となります。アンドロゲンとは、テストステロンを含む「男性ホルモン」の総称です。完全型AISは、染色体核型が「46,XY」で、精巣ができ、AMHも分泌されてミュラー管が退縮するので、子宮などの女性型内性器は形成されません。しかし、外性器を決定するときに男性ホルモンがうまく作用しないことで、外性器も含めて表現型が女性型になります。

 次に、女性型の形成についての説明です。第二のステップで性腺が女性型となると、精巣がなく、セルトリ細胞からAMHが分泌されないのでミュラー管が残り、女性型内性器が発達していきます。ウォルフ管はテストステロンの作用がないと発達できず退縮します。外性器もテストステロンがなければ女性型(陰核、陰唇、腟下部2/3)になります。

 ―― 一口にDSDといっても色々な状態があり、原因もそれぞれだということですね。

 医学的には「性染色体異常に伴う性分化疾患」「46,XY性分化疾患」「46,XX性分化疾患」の大きく3つに分類されていますが、おっしゃるようにDSDとなる原因やその表れ方は多岐にわたり、特定の遺伝子によることが判明しているDSDもあれば、原因がわかっていないDSDもあります。
 これだけ多様ですので、患者さんやそのご家族の多くは「自分はDSDだ」というより、「自分は○○だ」と、あくまで個別の症状として認識されていると思います。DSDは約5000人に1人の割合で起こるとも言われますが、これはおそらく海外のデータで、日本ではほとんど統計はとられていないと思います。今述べたように、DSDといっても非常に範囲が広いので、どこまで含めるかというところも難しいのです。

 たとえば「尿道下裂」という症状があります。通常なら陰茎の先端まで達する尿道の形成が途中で止まり、出口(尿道口)が陰茎のどこかにできるというものです。300~1000人に1人の割合で発生すると言われていて、1歳前後から、陰茎の先端まで尿道を作る手術を行います。尿道下裂は、なんらかの理由で男性型外性器の形成が典型的な道筋をたどらないという点で、実はDSDに分類されます。ただ、外性器が男性型で精巣もあり、検査をすれば染色体核型も男性型なので、出生時の性別は男性が選ばれますから、医療者も含めて尿道下裂がDSDという認識はあまりないのではないかと思います。

【DSD(性分化疾患)について知ろう(後編)~「性別を判定する」とはどういうことか】に続く

著者情報

イミダス編

いみだすへん

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。