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社会問題

職場のパワハラは、これでなくなるのだろうか?厚労省のパワハラ指針案は問題だらけ

パワハラ防止措置が義務化。その後の動きを追う

笹山尚人(弁護士)

 さらに指針案では、ハラスメントに該当しない場合についての例も示されていますが、該当しない例を掲げるなど余計なことだと言わざるを得ません。こうした例示を行えば、「こうすればハラスメントにならないんだな」という誤解を事業主や行為者に与えることになりかねず、それは法律がハラスメントの隠蔽(いんぺい)に加担することに他なりません。
 定義された文章を読んで自分のケースがハラスメントに該当すると被害者が考える場合は、基本的にはハラスメントとして認められるべきです。例外的に該当しないことも有り得るとされる場合は、人間関係や(措置義務対象となっていること以外の)周辺事実を慎重に確定してハラスメントかどうかの判断をするべきなのです。

立法者の意思を軽視していることは許されない

 今回の改正法は、成立する際、国会の付帯決議がなされています。指針案は、その付帯決議で表明された内容が、十分反映されていない点も重大な問題だと感じています。
 指針案では、「個人事業主、インターンシップを行っている者等の労働者以外の者に対する言動についても必要な注意を払うよう(中略)努めることが望ましい(下線は筆者による)としています。
 19年5月28日の参議院厚生労働委員会の付帯決議では、「九、2」で、「自社の労働者が取引先、顧客等の第三者から受けたハラスメント及び自社の労働者が取引先、就職活動中の学生等に対して行ったハラスメントも雇用管理上の配慮が求められること」についても指針に明記することを求めています。19年4月24日の衆議院厚生労働委員会の附帯決議でも、「七、1」にこの点に関する指摘があります。
 ここで立法者が求めているのは、「自社の労働者が、取引先、就職活動中の学生等に対して行ったハラスメントも」ということで「も」が入っていることから、自社内でのハラスメント同様の雇用管理上の配慮について定めなさい、というものです。
 しかし、指針案の内容は、自社内でのハラスメントと個人事業主やインターンシップの学生などとを区分けして、後者については「努めることが望ましい」との努力義務以下の内容を記載するにとどまっています。これでは実質的に、何もしなくても良いと言っているのと違いがありません。明らかに立法者の意思(国会での付帯決議)に反しています。
 このような立法者の意思の軽視は、行政の定める指針にあってはならないことだと考えます。

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 このように、厚労省が出している指針案は、問題だらけと言えるでしょう。パブリックコメント(意見公募)でも多くの批判が寄せられました。しかし、労働政策審議会は、この指針案をパブリックコメントの締め切り(19年12月20日)後、あっという間に了承してしまいました。まことに残念です。ですが、この指針案の問題点を引き続き告発し続けることは、今後の改訂の足がかりになります。現場からの告発が求められていると思います。

 

*厚労省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)に係る御意見募集について」  指針案もこちらのページから読むことができます。

著者情報

弁護士

笹山尚人

ささやま なおと

1970年北海道生まれ。弁護士。94年中央大学法学部卒業。2000年弁護士登録。第二東京弁護士会に所属。東京法律事務所に入所。主として、青年労働者や非正規雇用労働者の権利問題、労働事件や労働問題を扱って活動している。著書に『人が壊れてゆく職場』『それ、パワハラです』『ブラック職場』(以上、光文社新書)、『労働法はぼくらの味方!』『パワハラに負けない!』(共に、岩波ジュニア新書)、『ブラック企業によろしく』(KADOKAWA)等がある。

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