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黄色い蝶に導かれて 2025年ガルシア=マルケスの土地を訪ねる旅 第5回 リオアチャ

野谷文昭( ラテンアメリカ文学研究者)

 しばらくすると、前日、民族舞踊を披露した「おじ」と称する人物が現れた。どうやらこの文化村で土産物屋の留守番をしているようだ。家族は今どこにいるのか、エスペランサの家はどこかと尋ねてみたが、なんだか要領を得ない。ようやく、家はビジャ・ファティマの方だと教えられ、目印は家の前に停めてある赤い車とサボテンだという情報を得た。そこで車で向かうが、どのくらいの距離なのかはっきりとはわからない。草原の一本道を進む。そのうち何軒か家が現れ、人の姿が見えたので、エスペランサを知っているか、家はどこかと尋ねてみる。すると、黄色いペンキの塗られた橋を三つ越えて右に入ったところに建つ白い家だという返事が返ってきた。
 確かに水路には縁が黄色く塗られた小さな橋が三つ架かっていて、渡った先に白い家が見つかった。付近には他にも平屋の家があり、集落になっている。似たような家が建ち並ぶ中に、ひときわ目立つ真っ白な家があり、開け放たれた窓から、壁面に吊るされたスポーツバイクとポップアートらしき絵が見える。それがエスペランサの家だった。

家のまわりにはヤギが放牧されている 撮影:篠田有史

 大家族は周辺にそれぞれの家を建てて暮らしているようだ。前の日、カメラマンのカメラやドローンに大いに興味をもった子どもたちは今学校に行っていて、夕方5時まで戻らないという。エスペランサは、僕たちの突然の訪問にびっくりした様子だったが、歓迎してくれ、文化村の仕事ではないからか、前日とは違って気さくに話し、よく笑った。スマートフォンに保存している親戚の写真を見せ、「この子は顔が日本人っぽいので、親は日本人じゃないのかと親戚中が言ってるんだよ」という具合に打ち解けた会話が続いた。このあと僕たちはバランキージャまで300km近いドライブを予定していたので、家にいた女性たちとも話をしたのち、リオアチャを離れることにした。その前に、エスペランサに気に入られたらしい工藤律子くんは連絡先の交換をしたらしく、その後、毎日簡単なメッセージが届くと言っていた。見せてもらうと、「今どうしてるの?」といった、まるで思春期の女の子のようなメッセージだった。

著者情報

ラテンアメリカ文学研究者

野谷文昭

のやふみあき

1948年、神奈川県生まれ。バルガス=リョサ『ケルト人の夢』(岩波書店)翻訳で、2022年の第59回日本翻訳文化賞を受賞。主な訳書に、ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』(新潮文庫)『ガルシア=マルケス中短篇傑作選』(河出文庫)、マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』(集英社文庫)、ホルヘ・ルイス・ボルヘス『七つの夜』(岩波文庫)など多数。著書に『ラテンにキスせよ』(自由國民社)、『越境するラテンアメリカ』(PARCO出版局)、『マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー』(五柳書院)などがある。

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