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常識を疑え!

かつてのサブカル・キッズたちへ~時代は変わった。誤りを認め、謝罪し、おずおずとでも“正論”を語ろう

香山リカ(医師)

 クリエイターの解任、辞任が相次いだ東京オリンピックの開会式は、残念ながら「80年代、90年代サブカルはもう終わった」ということを示しただけで、それに替わる新しい文化を世に送り出すまでには至らなかった。
 ただ、人権意識を置き去りにしたまま、センスがよい、おもしろい、クール、暑苦しくない、といった上っ面だけを追い続けても、ハラスメント、虐待、いじめ、差別による被害者は増え、世界の人権感覚からますます遅れを取るばかりだ。それでも声高に語るのは苦手だという人は、デイヴィッド・バーンのように、まず過去のあやまちを知った時点でそれを認め、謝罪することが必要だ。そして、自分が残してきた作品や道のりも含めて過去を全否定するのではなく、そこからおずおずと正論を語ってみればよい。
 もし、それを行わないとどうなるか。かつてのサブカル・キッズたちもすでに50代から還暦にさしかかっている。いま人権や正義について語らないと、もう間に合わなくなり、「昔はよかった」と懐古的に自慢話をしながらどんどん世界から取り残され、みじめな晩節を送ることにもなりかねない。
 世界は変わったのだ。差別やハラスメント、虐待はいかなる理由があろうとも許されない。人種的マイノリティ、先住民、その社会で生きる外国人、女性、子ども、障害や病気のある人、なんらかの事情で貧困な状態にある人などの社会的弱者に対してならばなおさらだ。もし差別、ハラスメント、虐待がまだ社会に残っているなら、あらゆる努力をして是正していくべきなのである。
 サブカル・キッズもそれを受け止め、「オレたちの時代は終わった」などと腐ることなく、持ち前の知識や経験、才能などを十分にいまの社会、これからの社会のために発揮してほしいと思う。いまならまだ間に合う。私はそう思い、自分にも言い聞かせているのだ。

著者情報

医師

香山リカ

かやま りか

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒業。学生時代より雑誌等に寄稿。その後、精神科医として臨床に携わりながら、一般読者向けの著作活動を行う。著書に『女は男のどこを見抜くべきか』(集英社)、『執着 生きづらさの正体』(集英社クリエイティブ)、『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書)、『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました』(集英社クリエイティブ)など多数。

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