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連載

社会は若者をどこへ向かわせるのか? 〜「学生店長」誕生ニュースで感じたこと

第83回

大内裕和(武蔵大学教授)

 アルバイト先で基幹労働を担わざるを得なくなったのに加え、その経験が就職活動にも大きな役割を果たすとなれば、学生たちが正社員並みの責任感をもち、熱心に働くようになることは当然の成り行きでしょう。やがて彼らの中には職場で頼りにされ、責任者となる者も出てきます。かつて社会でブラックバイト的な働かせ方が広まった時には、「バイトリーダー」「バイトマネージャー」「時間帯責任者」「コアスタッフ」などの職名のもと、実質責任者として働く学生アルバイトが増えました。

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 先の報道によると今回の「学生店長」は、企業側には年齢や雇用形態にとらわれず能力や成果を評価して採用増につなげたい狙いがあり、待遇面も正社員の店長と同一なのだそうです。ですがアルバイト先の職場から優秀と評価されても、「当人は学業が本分の学生である」という部分が尊重されていなければ、ブラックバイトの延長上と見ることもできます。

 言われるまでもなく、学生が基幹労働を担う働き方は、現代社会ではすでに一般化しています。しかしどんなに一般化しようとも、「学生であることを尊重しないアルバイト」が、彼らの学業を含めた学生生活に悪影響を与えることは明らかです。その点で「学生の本分は学業」と言い切り、今回の「学生店長」誕生に批判的なコメントを寄せた塾・予備校の講師の方々に、私は深く共感します。

 と同時に、大学に勤務する教員の一人として、私はこの状況に強い責任を感じています。学生がここまで働かなければならない理由の一つは、大学の学費の高さと、未だ貸与型中心の奨学金制度にあります。ブラックバイトと呼べるような学生の不当な扱いには反対しますが、経済的理由から過酷な働き方をせざるを得ない学生たちを批判する資格は私にはありません。

 アルバイトの学生に基幹労働を担わせることが一般化している状況を「良し」として認めるか否かが、私たちに問われていると思います。現役の学生が学ぶこと以上に「働くこと」を優先させる、学生生活の途上にある若者を社会人並みに働かせたうえで「活躍」と評価する――そうしたあり方が彼らの未来、そして日本社会の未来にどのような影響を与えるか? ぜひ読者の皆さんにも考えていただきたいです。

 学生を育成する方法や、大学の研究・教育のあり方に問題があるなら、私を含め大学関係者はその批判を甘んじて受けなければなりません。一方、アルバイトで過度な責任を負わされる働き方や、学業に悪影響を与えるほどの就職活動の早期化・長期化が問題となれば、その責任は大学の外にもあると言わざるを得ないでしょう。彼らのより良い学生生活と未来に向けて、責任を押しつけ合うのではなく、関係者が知恵を出し合う必要があると思います。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社クリエイティブ)、『教育・権力・社会』(青土社)、『ブラック化する教育 2014-2018』(青土社)などがある。

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