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テレワーク 男は天国 女は地獄 〜コロナ禍、在宅の男女格差に思う

雨宮処凛(作家、活動家)

   テレワーク 男は天国 女は地獄

 これは、ある報告書を読んだ時に頭に浮かんだ川柳だ。

 私に人生初川柳を詠ませたのは、2021年4月28日、内閣府の男女共同参画局が発表した「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書 〜誰一人取り残さないポストコロナの社会へ〜」。この報告書には、「女性不況」と呼ばれるコロナ禍で、女性がどのような状況に置かれているかが実に詳細に分析されている。

 前年と比較して、20年には935人増えた女性の自殺者。その中で特に増えているのが、主婦など同居人がいる女性という事実。また、ステイホームが呼びかけられる中、増えたDV相談。コロナ禍で大量にクビを切られた、飲食業や宿泊業で非正規で働く女性たち。子どもの学校の一斉休校によって、仕事を続けられなくなった女性たち。一方、介護施設などでのクラスター発生により、高齢者を自宅で世話しなければならなくなった女性たちもいる。

 報告書からは、コロナ禍で女性が貧困に晒されるだけでなく、より無償ケアを強いられる現実が浮かび上がる。その要因の一つが、テレワークだ。

 男性では、テレワークのメリットを挙げる声が目立つ。「通勤が少なくなりストレスが減る」(27.2%)、「通勤時間分を有意義に使える」(27.7%)、「家族と一緒の時間が増えてよい」(19.2%)などだ。

 一方、女性から聞こえてくるのは「家事が増える」(17.6%)、「光熱費等の出費が増える」(31.2%)、「自分の時間が減ることがストレス」(13.6%)などの声。

「第一回緊急事態宣言を経て、今後、家事・育児に望むこと」という質問では、その傾向がよりはっきりと現れる。小学3年以下の子どもがいる女性のうち、「配偶者にもっと子どもの世話をしてほしい」と望むのは35.5%。「配偶者にもっと家事をしてほしい」と望むのは32.1%。

 また「第一回緊急事態宣言中に不安を感じた機会がどれだけあったか」の質問では、小学3年以下の子どもがいる女性のうち37.5%が「家事・育児・介護の負担が大きすぎる」と感じ(小3以下の子どもがいる男性では19.8%)、34.1%が「健康を守る責任が大きすぎる」と感じたと回答している。

 このようなデータからは、男性が在宅ワークで快適さを享受する裏で、自宅で仕事をしようにも家事や子育てや介護に忙殺され、「キェーッ!!」と奇声を発したくなるほどに追い詰められる女性たちの姿が浮かんでくる。もちろん、テレワークで大変なシングルファーザーもいれば、共働きで家事、育児に忙殺される男性もいるわけだが、全体の傾向で言うと女性の負担が増えていることは確かである。

 そんなステイホームでは、やはりDV相談も増えている。20年4月から21年2月までで17万件を超え、前年同期の約1.5倍。その中には、緊急事態宣言中、パートナーが家にいて暴力が激しくなったという相談もあれば、精神的、経済的な暴力もあり、また10万円の特別定額給付金をパートナーが渡してくれない/使ってしまったというものもある。

 自分の周りを見渡しても、夫が在宅ワークで息が詰まるという声もあれば、夫が失業し、家族に当たり散らしているという話もある。

 そんな中、昨年は子どもの自殺が過去最多の479人となった。6月と8月、長期休み明けに2つの山があることからこの時期の自殺はいじめなど学校問題が原因と考えられるが、それ以外の時期も増えていることを考えると、家庭の軋轢が子どもに向かっているケースも多いことが予想される。気晴らししたくても、緊急事態宣言下では逃げ場となる商業施設などもすべて閉まっている。

 中でも女子高校生の自殺が多く138人。前年から倍増しているのだが、自分が高校生の頃にコロナ禍が来ていたら、と思うとありえない話ではないと思う。当時の私は中学生の時のいじめの後遺症でリストカットばかりし、唯一の楽しみはライヴだった。それがコロナでライヴがなくなり、生きがいをなくした上、自粛ムードの中、「外に出るな」とか「人と会うな」とかガミガミ言う親と顔を突き合わせていなくちゃいけない状態だったら――。

 ただでさえ精神的に不安定だった10代、「もう生きていたくない」と思っていた可能性は十分すぎるほどにあると思うのだ。

 コロナ禍では、そんなふうに居場所を失った子どもや女性たちが性被害に遭うケースも増えている。20年4〜9月に性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに寄せられた相談件数は、前年同期の約1.2倍。一部のセンターからは、SNSを通じて知り合った相手からの被害相談が増えているという。

 ちなみに、日本の殺人事件の半分以上は親族間で起きていることは有名な話だ。そのことを思うと、家族が密室で「ステイホーム」することの危険性に国はあまりに無自覚なのではと思う。

 そんな中、女性の自殺者が激増したのは多くの人が知る通りだ。20年の自殺は、男性が23人減ったのに対して女性は935人増。その中でも多いのが「無職者」「被雇用者・勤め人」。無職者の中では主婦や年金生活者の自殺が増えている。

 注目すべきは、女性の場合、「同居人あり」の自殺者が「同居人なし」の自殺者よりかなり増えていることだ。例えば20年10月を見ると、女性の自殺者は前年同月比で、「同居人あり」は324人、「なし」は101人の増加となっている。他の月を見ても「同居人あり」の増加が大きい。

 このことについて報告書は「経済生活問題や勤務問題、DV被害や育児の悩み、介護疲れや精神疾患など様々な問題が潜んでいる」と指摘する。もともとあった問題が、コロナ禍でさらに深刻化したという形だろう。報告書には何度か〈もともと崖の近くにいた女性が、コロナによって崖のギリギリまで追いやられた〉という表現が登場するが、まったく同感だ。

 それでは、コロナ感染者数に男女差はあるのだろうか。報告書によると、国内での感染者は4月27日現在、累積で57万人。うち女性は46%と約半数。しかし職種別に見ると、女性感染者には医療関係、介護福祉関係、児童施設関係、店員・接客関係の割合が高い。

 詳しく見ていくと、医療関係(事務等含む)で感染した人のうち、70%以上が女性。介護・福祉関係(事務等含む)では60%以上が女性。児童施設関係では90%以上が女性だ。業務以外での感染も含まれるということだが、感染リスクの高い職場で働く多くが女性である。

 ちなみに日本の医療・介護従事者のうち、女性が占める割合は、看護師92%、訪問介護員78.6%、施設介護職員70.1%。また、保育士は95%、幼稚園教員は93%が女性。しかし、これが大学教員となると26%にまで下がる。

 一方、コロナで大きな影響を受けた宿泊・飲食業で働く人のうち、女性が占めるのは64%。うち女性非正規が54%を占める。この層の多くが長期的な影響を受け、困窮に陥っていることは多くが知る通りだ。

 報告書は、他にもさまざまなことをあぶりだした。20年の平均で、女性の非正規労働者が50万人減ったこと(男性は26万人)。同じく20年の平均で、休業者は男性104万人だったものの、女性は152万人だったこと。女性の収入が1割以上減った家庭では、5世帯に1世帯が食費の切り詰めをしており、1割弱が公共料金の滞納をしていること。

 コロナ禍で、正規で働く人より非正規で働く人の方が不安が増していることも明らかになった。

 20〜39歳の非正規雇用者の38.5%が、不安が増していることに「生活の維持、収入」を挙げている(同世代の正規は30.1%)。40〜59歳の非正規雇用者では37.1%(同世代の正規は30.5%)。「将来全般」への不安の増大も20〜39歳の正規雇用者が20.7%なのに対し、非正規雇用者は27.4%。40〜59歳の正規雇用者では23.9%なのに対し、非正規雇用者は32.4%だ。

 男女別で見ても、女性の方が不安が増大していることがわかる。

 また、感染リスクに大きく関わるのがテレワークできる/できないという問題だが、こちらの格差も浮き彫りになっている。テレワークの実施調査によると、20年5月、女性、非正規雇用労働者、低所得者のテレワーク比率はいったん増加したものの、同年7月にはほぼコロナ前の水準に戻っていたという。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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