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いつもココロにYOSHIKIとオーケン 〜平成のバンドブームの教訓を令和でも大事にし続ける女

雨宮処凛(作家、活動家)

 急に有名になって金遣いが荒くなり、生活が破綻した人などの話は身近にゴロゴロ落ちていた。だからこそ、いつかブームっぽいものが来ても金銭感覚は変えず、調子に乗らず、いつでもバイト生活に戻れるくらいの感じでいよう、とにかく見栄を張らないでいようと自分に言い聞かせていた。

 さて、そうして十数年前、貧困問題のブームは過ぎ去ったものの、問題はまったく解決していない。それどころか、注目されていた頃よりさらに状況は悪くなっている。

 非正規雇用率は上がり、ブームの頃1600万人だった非正規雇用者は2100万人を突破。就職氷河期世代を指す私の世代であるロスジェネは50代に突入しつつあり、苦境は今も続いている。平均賃金は30年間横ばいの状態で、2010年にはGDPで中国に抜かれ、15年には韓国に平均賃金で抜かれ、24年にはGDPでドイツに抜かれて世界4位となった。そこに物価高騰と円安が続き、実質賃金は24カ月連続で低下し続けている。

 そんな中、私は今も貧困問題に関わる活動を続けている。

 特に20年からの3年間はコロナ禍の影響で支援現場は野戦病院のような状態。失業した人や住まいを失った人などの相談に乗り、生活保護申請に同行するなどの支援に私も関わってきた。困窮の度合いや世代、性別を問わないことで言えば年越し派遣村の時より状況はずっと深刻なのに、メディアの注目はあの時とは桁違いに低かった。

 しかし現場には、そんなことは全く関係なく、20〜30年、別の仕事をしながらボランティアで困窮者への炊き出しを続けてます、なんて人たちがゴロゴロしている。誰にも注目されず、どこにも評価されずとも淡々と困っている人のために何かをしている人の姿は神々しくて、そんな人たちこそ来世は石油王なんかになってほしいと思うのだが、当人たちはそういうものにまるで無関心だ。

 一方で、アラフィフの私は1990年代のヴィジュアル系ブームも知っている。LUNA SEAや黒夢、GLAYが売れに売れ、SHAZNAやLa’cryma Christi、MALICE MIZER、FANATIC CRISISが「ヴィジュアル系四天王」と言われた時代。

 それを知る身が今のヴィジュアル系シーンを見ると、時々叫び出しそうになる。

「このバンド、90年代だったら一瞬で武道館に行ってるのに!」

 そう思うほど楽曲もヴィジュアルも素晴らしいバンドがあるからだ。しかし、ヴィジュアル系ブームが終焉して久しい無風の今、なかなか一般層に届くようなブレイクは期待できない。そんな状況に歯噛みしつつ、世の不条理を思う。

 さて、今日も誰かの上に「神様の気まぐれ」でサイコロが止まる。それは誰にもコントロールできず、個人の努力とかは一切関係なくやってくる。

 そういう意味では、今は誰もが有名人になれてしまう時代だ。YouTubeやTikTokで多くの人が一瞬で顔と名前を知られるようになり、注目を集め、秒速で忘れられていく。

 私が若かりし頃と比べものにならないくらい、アクセスやビュー、インプレッションがすべての世界で生きることは、メンタルを削りまくるだろう。

 だからこそ、心にYOSHIKIの格言のようなものを持っていると安全だと伝えたい。あなたの価値は、注目度とは関係ない。このことを知らなかったら、そして『リンダリンダラバーソール』を読んでいなかったら、下手したら死んでたかもしれないとさえ思う。

 そんな大切なことを教えてくれた、私にとっての二大スターであるYOSHIKIとオーケンが今も現役で活躍していることが、私には嬉しい。一緒に年をとってくれる「推し」がいるということ。それはどれほど救いになるだろう。

 願わくば、私も読者とともに年を取っていける物書きでありたいと思う。そして最終的には、YOSHIKIとかオーケンが時々来てくれる老人ホームなんかを作りたいという妄想が今、頭に浮かんだ。もう歌とか演奏とかなくてもいいから、昔話を存分に聞きたい。完全に届かぬ夢だが、絶対これ、需要あると思うのは私だけではないはずだ。

 ということで、推しには、長生きをしてほしいとしみじみ思うこの頃である。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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