性知識イミダス:知っているようで知らない「女性外性器」
イミダス編
(構成・文/加藤裕子)
そもそも、内診をするかどうかというのも、本来は医師が一方的に決めていいことではありません。医師は受診者の同意がない処置をしてはいけないし、自分が嫌だと思うなら受診者は意思表示をしていいはずです。
「念のため内診、触診しておこうか」と言われたら、「念のため、何を調べるんですか?」と聞いた方がいいですね。「念のため」といった曖昧な理由ではなく、専門家である医師はきちんと処置の目的と必要性を医学的に説明し、受診者を納得させなければいけません。
さらに、出産のときにはもっと切迫した問題が起こりえます。たとえば分娩中、クリトリスと小陰唇の前側に亀裂が入るような分娩介助は避けるべき、というのが私の持論です。なぜなら、亀裂によって性感が変わってしまい、産後のSRHRに関わるからです。逆に腟口の後ろ側の会陰は、クリトリスからの神経はありません。裂傷や切開で一時的に性交のしにくさや違和感が起こることはありますが、性感への影響は少ないのです。でも、妊婦さんの側に知識がなくてされるがままでは、医療者にそうした大事な場所を傷つけられることにもなりかねないですよね。
また、帝王切開の手術の際、準備をしている間、妊婦さんが全裸のままで放っておかれるということもよくあるようですが、「呼吸状態を見るので胸を開けますね」「寒くないですか」「すぐにシーツを掛けますね」などの言葉かけや、意識のある状態での露出は最小限にするなどの工夫が必要です。医療の現場であっても、医療者にすべてお任せでは、自分のからだが大事に扱われないということにもなってしまうでしょう。もちろん医療者も、緊急の場であっても、他人のからだを尊重し、配慮してほしいと思います。
ただ管理されるのではなく、自分の尊厳を大切にしよう
女性のからだは、特に「妊娠のため」「出産のため」という名目で管理の対象になりやすく、出産などの目的を最優先するために「性的な権利」や「尊厳」は後回しにされがちです。
ですが、なぜ女性ばかり基礎体温を測ったり、妊娠中に体重などの数値を記録したり「指導」されないといけないのでしょうか。男性が「朝立ち」の記録をつけたり、勃起の角度を測ったりすることを指導・強制されないということと比べれば、不思議に思えてくるのではありませんか? 管理をただ受け入れるのではなく、産科・婦人科における処置や記録や指導にどんな意味があるのかまで意識し、納得がいかなければ質問してみる方がいいと私は思います。
腟はセックスのときに陰茎(ペニス)を受け入れ、出産のときには赤ちゃんの通り道になる場所で、主体性を感じにくいのかもしれません。でも、それは裏を返せば、女性は受精から出産という生殖の連鎖の輪の真ん中にいるということを意味しています。女性は弱い立場におかれやすいけれども、生まれながらに弱いということではありません。誰かにからだを触れさせるとき、嫌なことがあっても「私さえ我慢すれば」という態度を続けるのではなく、自分の行動で社会が変わっていく、そのための一歩としても、「自分のからだは自分のもの」という当たり前の意識を持ってほしいと思います。
女性器の形、大きさは人それぞれ
男性と違って、女性は同性の性器の形を見る機会が少ないということもあり、「自分の性器は普通と違うのでは」と悩む人もいるようです。けれども、女性の性器にはかなり個人差があり、生活やセックスに支障をきたすのでなければ、心配することはありません。陰毛の形や量も人それぞれで、それらにまつわる俗説は科学的根拠がないものばかりです。
たとえば「色が黒ずんでいると性体験が多いと思われる」と気にする人には、「じゃあ、男性はどうなの? セックスやマスターベーションをたくさんすると黒くなるんですか?」と聞きたくなります。性器が黒ずむのは、年齢が上がると色素が沈着することなどが理由で、これもホルモンの量などで個人差があるものです。
そもそも、性器がピンクの方がよいというのは女性に幼児性を求めているということで、「性体験が多い成熟した女性は嫌だ」という男性の願望に基づく社会的な固定観念です。こういうことからも、日本は成熟した男女がそれぞれ主体的に性を楽しむという発想が非常に乏しいと感じます。
また、女性器の位置にも個人差があります。俗に「上付き」「下付き」と言って、立った状態で正面からクリトリスが見えるのが「上付き」、見えないのが「下付き」です。これは単に肛門から腟入口までの距離の話で、肛門からの距離が長い(3~4cm以上)上付きの人の方が会陰が長い、すなわち出産時に伸びる部分が多いということで、赤ちゃんが出てきやすいなどのメリットがありますが、セックスに関しては上付きだろうと下付きだろうと、何も問題はありません。
あえて言えば、上付きだと正常位で挿入しやすく、下付きは後背位での挿入がしやすいということで、要はどちらからより挿入しやすいか、ということにすぎません。これも女性が自分の腟口の位置がわかっていれば、「痛くない方から挿入してほしい」「こっちの方が気持ちいい」と言うことができるでしょう。

『徹底図解!「女」のからだQ&A』(2004年、宝島社)などを参照しイミダス編集部作成
正しい洗い方、VIO脱毛、お手入れの方法は
自分の外性器がどうなっているのかを知らなければ、清潔を保つこともできません。性器が不衛生な状態では、セックスをするときも見た目や匂いが気になるなどいろいろと支障が出るでしょう。
洗うときは、耳たぶや耳の裏を洗うのと同じように、ひだのところに指先を沿わせて溜まった垢をきれいにします。腟の中は自浄作用がありますから、洗う必要はありません。大陰唇の表面(陰毛が生えている部分)は皮膚なのでからだを洗う感覚でいいのですが、大陰唇の内側と小陰唇は粘膜ですから口の中を洗うのと同じで、あまり強い力でゴシゴシ洗うと痛みが生じたり、傷ができたりします。ただ、これも口の中と同じで、修復能力が高い場所ですから、ちょっと傷ができてもすぐ治ってしまいます。一般的なボディソープだと刺激が強いこともあるので、お湯で洗うか、使いたい人は市販の専用洗浄剤を使ってもいいと思います。
更年期で粘膜が潤い不足になっているとき、外から保湿剤などを塗って潤いを与えるのもいいですが、そもそも分泌腺は使わなければ萎縮してしまうので、もし嫌でなければ、まずは分泌腺を活かすようなメンテナンスをすることをおすすめしたいと思います。セックスやセルフプレジャーなど、廃用萎縮を避けるには月2回程度以上の行為が望ましいでしょう。個人差はありますが、メンテナンスをしている人は70代でも潤っていますし、そうでない人は若くても乾燥しています。
VIOゾーン(いわゆるデリケートゾーン。恥丘、外陰部、肛門周辺のこと)の脱毛は今、やっている人が多いですね。体毛はからだを守るシステムのひとつで、以前は陰毛があることで摩擦しにくくなり、外性器を守ると言われていましたが、これだけ脱毛している人が多いのですから、陰毛がなくても別に不都合はないということでしょう。
医師としては、脱毛した方がいいというものでもありませんし、しなければしないでもいい、したければすればいい、というものだと思います。ただ、「パートナーに言われたから」という理由で脱毛するのではなく、あくまで自分がどうしたいかで決めてほしいですね。
【各部の機能などを解説した「性知識イミダス:女性の生殖器を知ろう②外性器」はこちら!】