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コロナ対策の税金の使い道に不満はないか? 財政民主主義を守るためには

掛貝祐太(茨城大学講師)

 もっとおすすめなのは、自治体の議事録である。ある程度の規模以上の自治体であれば、検索用のデータベースがあるので、関心のあるキーワードなどで調べてみてほしい。この地区は再開発してほしくない、程度の要望は誰にだってあるだろう。議事録を読むと「こんなに細かく予算の適正性を追及しているのか……」となることもあれば、「全然追及していないじゃないか……」となることもあるだろう。また、選挙の際に発表されるマニフェストで分からない部分の議員の実際の立ち位置も分かるので、選挙の際にも役立つだろう。

 

税金に口を出す権利は、みんなにある

 では、税の使い方を知ったうえで何ができるか。請願、陳情、デモ、SNS上での発信なども手段の一つだ。だが、もっと簡単な手段の一つに、オンライン上での署名運動がある。既に知っている人も多いとは思うが、Change.orgはオンラインで署名活動への参加が可能なプラットフォームだ。最近でも「コロナで困窮する子どもたちを救おう!プロジェクト」や、ミニシアターへの経済支援など、コロナ対策に関係する財政政策についての署名が行われ、部分的に政策に反映されるなどしている。

 また、現在も五輪の開催の是非についても署名が集められ、反対派の署名は既に40万筆を超えている。国政レベルだけでなく、地方レベルでも同サイトは有用だ。コロナ関連ではないが、新潟の小学1年生(!)が立ち上げた地元へのスケートボード場建設をもとめる署名も、1万8000筆を超えている。こうした社会運動自体に日本では抵抗感が強い、とも言われているが、デモなどと比べるとネット上の署名運動は比較的ハードルが低いようである。

 さらに筆者がもっとも有効だと考えているのは、「部分的な直接民主主義の導入」である。

 スイスでは、5万筆の署名があれば、法的拘束力を持った国民投票を請求することができる。投票は年に3、4回の頻度で行われ、例えば2020年度には、戦闘機の購入や子育て世帯への減税などが国民投票にかけられた。コロナ対策についても、ロックダウンなど個人の自由を制限する議会の決定に反対する署名が集められ、6月に国民投票が行われる予定だ。こうした制度の下では民意から乖離した政府の決定は不可能だ。

 もしもこうした制度が日本にもあれば、世論調査で過半数以上が反対している五輪の年内開催なども、民意を無視しての強行は難しいであろう。実際にスイスでは、州の財政負担が問題となり、住民投票の結果、五輪招致を見送ったこともある。

 現代スイス財政について研究している筆者としては、さらにラディカルな直接民主主義的な方法だってありうると考えている。ただ、残念ながら、日本では国民投票は、憲法改正を目的に検討されており、自民党の改憲案では、より国民の権利を制限する方向で検討されているようだ。地方レベルでも住民投票の意向が無視されることすらしばしばある。だが、少なくとも地方レベルでは、もっと直接民主主義的な財政民主主義のあり方が重視されてもよいのではないか。例えば、鳥取県智頭町(ちづちょう)などでは、住民が予算配分の意思決定に直接参加する「住民参加型予算」なども存在する。

 

 もちろん財政民主主義に万能薬などはない。むしろ、現代は、財政民主主義や民主主義にとっては冬の時代かもしれない。経済学者の中にはコロナ禍において、民主主義的な国ほど人命への影響が大きく、経済への影響も甚大であった、とする主張すらある。従来から経済学が民主主義的決定に不信感を抱いていることを振り返れば、何ら不思議ではない。しかし、私たちが全体主義・権威主義体制を受け入れるのではない道を選択するのであれば、検討すべきは民主主義の放棄ではなく、財政民主主義の実質化ではないだろうか。

 日本では、学校教育の中で、納税の義務のみを強調し、税金を使う権利意識を育んでこなかった(詳しくは拙稿「申請主義と財政教育」〔『生活経済政策』〕を参照)。しかし、近代国家として財政民主主義を掲げている以上、私たちには税金を納める義務があるだけでなく、使い道に口を出す権利があるのである。

 ジュネーヴに生まれた哲学者のルソーは、当時のイギリス人を指して、かつてこう言った。「彼らが自由なのは、議員を選挙するあいだだけのことで、議員が選ばれてしまうと、彼らは奴隷となり、何ものでもなくなる」。ほぼ選挙でしか民意を示せないなら、なぜ我々が奴隷でないといえるだろうか。

 

※本稿の執筆には慶應義塾大学経済学部助教の髙橋涼太朗さんにご協力頂いた。

著者情報

茨城大学講師

掛貝祐太

かけがい ゆうた

1992年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。専門は財政学。日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学助教(有期)などを経て、2020年より現職。

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