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なぜ、「妊娠させた男」の罪は問われないのか〜新生児殺害・死体遺棄事件から浮かび上がるジェンダーギャップ

雨宮処凛(作家、活動家)

 ちなみに中絶の際、「配偶者の同意」が必要とされているのは、日本やインドネシア、サウジアラビアなど11カ国しかないという(NHK NEWS WEB特集「“戦後まもなくから変わらない”日本の中絶」)。

 さて、その「中絶」にしても問題だらけだ。

 日本では「掻爬(そうは)法」という「かき出す中絶」が主流で、現在、他の方法との併用も合わせて6割以上が掻爬法だというが、この方法は危険とされて多くの国ですでに消え、WHO(世界保健機関)も「時代遅れでやめるべき」としている。

 産婦人科医の遠見才希子(えんみさきこ)氏は、タイで開催された国際会議で海外の参加者たちから言われた言葉を紹介している。

〈「日本は先進国なのになぜ、中絶が合法なのになぜ、女性に懲罰的な掻爬法を罰金のような高額でいまだに行っているんだ。なぜ安全な経口中絶薬を認めていないんだ」〉(PRESIDENT Online「未だに『かき出す中絶』が行われている日本の謎」)。

 この言葉を初めて見た時の衝撃は忘れない。日本で「当たり前」とされてきた中絶方法は、世界基準でみると「懲罰的」なのだ。また、緊急避妊薬が薬局で買えないだけでなく、経口中絶薬は日本でそもそも認可すらされていない。手術をするのではなく、薬を飲むだけで中絶ができる経口中絶薬は世界70カ国で承認され、WHOも安全な方法として推奨しているのに、である。現在、日本で中絶手術をすると10万〜20万円かかるが、海外での経口中絶薬は430〜1300円。これでどれほどの悲劇が防げるだろう(NHK NEWS WEB「経口中絶薬 年内めど承認申請へ “治験で有効性 安全性確認”」)。

 緊急避妊薬が薬局で買えないことも、経口中絶薬が認可されないことも、私には地続きの問題に見える。それはやはり、この国の意思決定の場に圧倒的に多いのが男性ということだろう。どちらも選択肢にある国々の姿勢からは「女性の心と身体を守ろう」という意識が見えるのに対して、懲罰的な手術が温存されているこの国のスタンスからは、「女の安易な中絶を防ごう」みたいな思惑ばかりちらつくのだ。

 それだけではない。常に背後に「女の身体」を支配し、時に罰するのを当然視する家父長制もちらつく。

 現在、緊急避妊薬の市販薬化については、厚生労働省でやっと本格的な議論が始まった。
 一方、経口中絶薬も年内をめどに承認申請がなされる見通しだという。

「女の身体」のことを決めるのは、他でもない、女性たち自身だ。
 そんな当たり前が、一刻も早く実現してほしい。

* * *

*避妊や中絶の現状について詳しく知りたいかたは、遠見才希子医師に取材した記事をご覧ください(編集部)
「避妊の基礎知識を知ろう」
「中絶の基礎知識を知ろう~日本と海外でこんなに違う!『安全な中絶』は女性の権利」

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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