imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

性知識イミダス:ネットのアダルトコンテンツについて考えよう(前編)~「アダルトコンテンツ=性の教科書」論の何が問題なのか

イミダス編

(構成・文/加藤裕子)

 斉藤章佳氏の著書(『男が痴漢になる理由』2017年、イースト・プレス) では、「アダルトコンテンツはファンタジー。それがわかっている個人が楽しむ分には、たとえ痴漢や強姦、盗撮、小児への強制的な性行為を描いた作品を流通させることにはなんの問題もない」などの意見に対し、「現実の性犯罪者の多くはこうしたコンテンツからの影響を確実に受けています」「20歳未満の少年にかぎれば、(「AVを観て自分も同じことをしてみたかった」と回答する)割合は5割近くになった(1997〜1998年警察庁科学警察研究所調査)」と反論している。そして、臨床の現場でも「倒錯的な性行動を取り扱ったAVをくり返し視聴することで、知らず知らずのうちにその人の内面で認知の歪みが形成され、ゆくゆくは性犯罪の引き金になる」実感があり、「性というものへの知識や体験が不足しているうちから」日常的にアダルトコンテンツに触れる危険を訴えている。

たかおさん「もちろん、表現の自由は守らなければならないですが、アダルトコンテンツの加害性や暴力性を“守る”ために、安全に暮らす権利が犠牲になっても構わないというのは、やはり違うと思います。アダルトコンテンツの危険性について、もっと真剣に考える必要があるのではないでしょうか」

子どもにアダルトコンテンツの問題をどう伝えるか

男女のからだのことを学ぶワークショップ(提供:アクロストン)

 2人のユニット「アクロストン」のワークショップでは、アダルトコンテンツを題材にしたロールプレイを小学校で行うこともあるという。

たかおさん「ワークショップでは、いろいろな動物のキャラクターを登場させていますが、ある動物の男の子が『見ろよ、これ。エロいだろ?』と、見つけた動画をみんなに見せるというシーンを設定し、そういうものを見たくないときにどう断るかを子どもたちに考えてもらいます。このワークショップで伝えたいポイントのひとつは、思春期になってアダルトコンテンツに興味を持つのは自然なことだけれど、見て怖いと思ったり、嫌がったりする人もいるから、人におおっぴらに見せるのはやめようね、ということ。もうひとつのポイントは、アダルトコンテンツにはとても暴力的なものがあるということ。しかも大人たちがお金儲けのためにものすごくたくさんの時間と人数を投入して作り込んでいるから、すごくリアルで、見た方は、『セックスってこういうものなのか』と思い込んでしまう。ちゃんとした知識がないうちにそういうものを見るのはやめよう、ということをセットで伝えています」

みさとさん「今の子はそれこそ赤ん坊の頃からネットに触れる機会があるわけですが、作り込まれたアダルトコンテンツを小さい子どもが見たら、それがフィクションだということは、まずわからないでしょう。子どもたちには、アダルトコンテンツの問題について、きちんと教えることが必要だと思っています」

 このワークショップでは、「アダルトコンテンツに興味を持っていないとしても、そういう自分を『おかしい』と思わなくてもいい」ということも教えている。

たかおさん「『男ならアダルトコンテンツが好きなのは当たり前』ではなく、好きな人もいれば嫌いな人もいる。そこは自由だよ、ということですね」

みさとさん「実際には友達同士の関係もあるので、その場で『自分は見たくない』と言えないこともあると思います。でも、言えなかったとしても、それはその子のせいではありません。責任を負うべきなのは、アダルトコンテンツを子どもたちが無防備に見られる環境を作っている大人の方です。もし、子どもが本当は見たくないのにアダルトコンテンツを見てしまったら、そばにいる大人は子どものこころのダメージを、子どもが話したいままに受け止め、『見てしまったのはあなたが悪いわけではないよ。見たくないという気持ちを大事にしてね』とフォローしてほしいです。また、これが理由でセックスへの嫌悪感を持ってしまわないように、信頼しあった関係でのセックスは、アダルトコンテンツのセックスとは全く違うことも伝えられるといいですね」

アダルトコンテンツを子どもに見せないようにするには

 ふたりの元には「小学校高学年の子どもが、アダルトコンテンツを見ていることに気づいたが、どうすればいいのか」という相談も寄せられるという。

みさとさん「それぐらいの年頃の子どもがセックスのことを知りたいという気持ち自体は大切なことで、むしろ知っていいことだと思っています。たとえば、避妊や性的同意のこともきちんと盛り込まれたアダルトコンテンツであれば、子どもが見ても問題ないのかもしれません。ただ、現状は、やはり過激で暴力的な内容のものが目立ちます。アダルトコンテンツの問題については、本当は学校でちゃんと説明してほしいのですが、性教育が十分にできていないという現状を考えると、やはり親が頑張るしかないのかもしれません。ただ、頭ごなしに『やめなさい』と言ってもなかなか思春期に入った年齢の子どもの心には届きません。『そういう動画を見ると、性について間違った知識を身につけてしまうって、本で読んだんだよね。だから心配なんだ』という感じで話すのが良いと思います。思春期の子どもは、大人の言うことを聞いていないようで、実はすごく聞いていたりしますから」

(提供:アクロストン)

 親の立場からすると、アダルトコンテンツを子どもに見せないようにするにはどうしたらいいかも気になるところだ。

みさとさんペアレンタルコントロールセーフサーチをつけるのもいいと思いますが、問題がふたつあって、ひとつは、厳しめに設定すると、問題がないコンテンツで子どもが見たいものがあってもはじかれてしまうんです。我が家のように、調べ物にデジタルデバイスを積極的に使わせたいという場合は、その塩梅がすごく難しい。かといって緩くすると、アダルトコンテンツがどんどん入り込んできてしまいます。キッズ向けのコンテンツに見えても、アダルトコンテンツが紛れ込んでいるということも少なくありませんし、完全に防ぐことは難しいと思います。
 我が家では、わたしたちが性教育の活動をしていて、子どもたちとも日頃からアダルトコンテンツの問題も含めた性の話をしているので、少し特殊な例かもしれませんが、ペアレンタルコントロールはつけずに、広告をブロックするアプリを子どもたちが使うデバイスに入れています。ただ、これもブラウザーによっては使えなかったりするので、けっこう設定が面倒ですし、動作が不安定になったりして、完璧というわけではありません。
 ふたつめの問題は、こういう制限をかけるときに、親が一方的にやっていいのかということです。大切なのは、『アダルトコンテンツに触れるのが心配だから、入れるね』と言って、子どもの同意をちゃんと取ること。子どもには、自分でいろいろなことを考えて、自分のことを決める権利があると思っています」

たかおさん「ユーザーとしてできる対策には限界があるので、アダルトコンテンツを配信する企業側がゾーニングの仕組みを作ることが必要ではないかと思います。現状では、映画でいう「R18+」(18歳未満の入場・観覧を禁止する区分)に相当するコンテンツだとしても、『18歳以上ですか?』という質問に対して『はい』とクリックすれば、子どもでも先に進めて、大量の無料サンプルが見られてしまう。ひとつの案としては、たとえば会員制にして、登録する際には本人確認、年齢確認ができるものを提示するという仕組みであれば、今の状況を変えられるのではないでしょうか」

みさとさん「成人には見る自由はあると思いますし、企業の側も、子どもにアダルトコンテンツを見せないというスタンスでいるわけですから、やはりもっとゾーニングをしっかりやってほしいということですね」

 アダルトコンテンツが子どもたちが性を知る入り口になってしまうことの問題は、想像以上に深刻と言えるだろう。
 前編では、親あるいは大人の立場でこの問題をどう捉えるべきかをうかがってきたが、子どもの頃からネットに親しんできたデジタルネイティブの世代は、アダルトコンテンツや玉石混淆の性情報がネットにあふれかえる現状をどう考えているのだろう。後編では彼らの声の一例を紹介する。

「ネットのアダルトコンテンツについて考えよう(後編)~ネットで「安心安全に」性を学ぶ仕組みをどう作るか」はこちら!】

著者情報

イミダス編

いみだすへん

関連記事

新着記事

imidasの更新情報をお届けします。