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連載

「助けるのは当たり前」~小学生が立ち上げたロヒンギャ支援

第21回

木村元彦(ノンフィクションライター、ビデオジャーナリスト)

「適切な物資を適切なボリュームで難民キャンプに送ることの壁の高さ、現地を知らない所以の『私たちの常識が非常識になる』ということを知るたびに感じる疲労感、政治的な背景を知る中で予定せずロヒンギャのニュースに出てしまい、その内容がわからずに『これは大変なことに手を出してしまったのではないか』という焦り。/でも絶対にやめたいと思わなかったのは、/『だってこんなに困ってるんだよ、助けるのが当たり前でしょ』の気持ちをまっすぐ伝えてくる子ども達に対峙する一大人としての意地と、現地で待っている子どもたち、そして心から応援してくれるたくさんの素敵な人たちとの出会いがあったから。」

 4人のクラウドファンディングに至ってからのアクションもスピーディであったが、送金後の現地パートナーの動きも早かった。いく度ものやりとりですでに厚い信頼関係が出来ていたバングラディシュ、コックスバザールの支援者は、入金を確認すると即座に支援物資である防寒具、サッカーボール、文房具に変えてキャンプに届けた。それらの支援品がしっかりと子どもたちの下に届き、有効に活用されている動画や写真が送られて来たのは送金後、5日も経たない年内だった。異例のレスポンスの早さと言えよう。授業を受けている写真、ニューボールでサッカーをしている動画、そして感謝のメッセージ。

「無事に着いて良かったです。支援はまだまだこれからです」

 聡真君たちは2021年も継続していく覚悟をしている。

子どもたち一人ずつに文房具が配られた

防寒具の入ったバッグを手に

 2021年1月28日、4人の活動が、シチズン時計が主催する「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。この賞は「社会に感動を与えた良き市民」に贈られるもので、今年で第31回目を迎える。歴代の中でおそらく最年少者を含む彼らの受賞は、またロヒンギャ難民の存在を広くアナウンスすることにつながったと言えよう。8カ月前、何も知らなかった子どもたちは、自分たちで調べ、考え、身体を動かし、支援の輪を広げ、今、大きな足跡を残した。

【追記】
 本記事の公開直前である2月1日の早朝、アウンティンから、ミャンマーでの軍事クーデターの一報が沈んだ声で告げられた。おいかけるようにアウンサンスーチー国家顧問たちの拘束が報道で伝えられた。
「こんな酷い事態になるとは……。私たちはどうなるのか」(アウンティンさん)
 日本国籍を取得しているアウンティンは日本の議員にロヒンギャ支援の陳情を重ね、メディアにも積極的に協力してミャンマー政府の非道を訴えるスポークスマンの役目を果たしてきた。少しずつではあるが、真の民主化に向けての歩みを実感しているところだった。
 しかし、司法、立法、行政の三権はすべて国軍の最高指揮官に移管されると発表された。不寛容極まりない暗黒時代への回帰という最悪の結果がもたらされた。
 ロヒンギャ難民たちの故郷への帰還の道はさらに遠のき、館林の同胞たちの悲痛な思いは想像を絶する。またロヒンギャに限らず、他民族の政治難民の増大も予想される。支援の継続はますますこれからも必要とされる。4人の子どもたちが始めた行動と思考の広がりを願ってやまない。

著者情報

ノンフィクションライター、ビデオジャーナリスト

木村元彦

きむら ゆきひこ

1962年、愛知県生まれ。中央大学卒業。東欧やアジアを中心に、スポーツ文化や民族問題などの取材、執筆活動を続ける。著書に『誇り』(98年、東京新聞出版局)、『悪者見参』(2000年、集英社)、『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』(05年、集英社新書)、『蹴る群れ』(07年、講談社)、『社長・溝畑宏の天国と地獄』(10年、集英社)、『争うは本意ならねど』(11年、集英社インターナショナル)、『徳は孤ならず』(16年、集英社)、『橋を架ける者たち』(16年、集英社新書)、『無冠、されど至強』(17年、ころから)、『コソボ 苦闘する親米国家 ユーゴサッカー最後の代表チームと臓器密売の現場を追う』(23年、集英社インターナショナル)など多数。『オシムの言葉』(05年、集英社インターナショナル)で第16回ミズノ・スポーツライター賞を受賞。

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