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特集

「1995」再考

座談会 「1995」とは何だったのか/②90年代と「鬼畜系」サブカルチャー

雨宮処凛(作家、活動家)

香山リカ(医師)

浜崎洋介(文芸批評家)

吉田徹(同志社大学教授)

(構成・文/加藤直樹)

吉田 95年は、WTO(世界貿易機関)が発足した年でもあるんですよね。Amazonがサービスを開始したのも同じ年です。つまりは、グローバリゼーション拡大の始まりに当たります。この時期から日本でも次第に主流化していったのが、ネオリベラリズム(新自由主義)でした。
 そういうなかで、それまで抑えつけられていた不安が、非正規労働の問題として表面化するのが90年代後半。派遣労働拡大に象徴される新自由主義は、実際には橋本龍太郎政権の時からすでに政策として進められてましたが、森喜朗政権で法制化され、小泉純一郎政権で全面化する。
 見田宗介の「虚構の時代」の話が出ましたが、その後の時代を見事に捉えたのが、2009年に出た高原基彰さんの『現代日本の転機』(NHKブックス)ではないでしょうか。すごくいい本ですが、この高原さんの見取り図は、もともと戦後日本には左の反近代主義と右の反近代主義があったとします。右の反近代主義は、「明治に戻れ」のような日本型保守主義。反対の左の反近代主義は、資本主義批判やウーマンリブといった70年代の文明批判を出自にしています。ところが、双方ともに日本型官僚制を敵としていたために、90年代以降の新自由主義化の流れのなかで双方とも駆逐されて、個人主義を基盤とする新自由主義が全面化した、という見立てです。
 この議論を敷衍ふえんしていうと、右の近代主義は新自由主義であり、左の近代主義は消費者主権とか自己決定権といった、いずれも個人主義の価値に依拠しています。2008年の福田内閣が「消費者大国」を掲げたのは、極めて象徴的です。そのような左右の近代主義が同調して、自民党がその流れで都市型政党へと変貌する。「虚構の時代」の次に来たのは、そういう日本型新自由主義の時代だったということだったように見えます。
(7月24日(金)公開の「③「小春日和」の終焉」につづく)

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。反貧困ネットワーク世話人。バンギャ、フリーター、右翼活動家などを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(2007年、太田出版/ちくま文庫)は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。著書に『学校では教えてくれない生活保護』(‎河出書房新社、2023年)、『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書、2024年)など多数。

医師

香山リカ

かやま りか

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒業。学生時代より雑誌等に寄稿。その後、精神科医として臨床に携わりながら、一般読者向けの著作活動を行う。著書に『女は男のどこを見抜くべきか』(集英社)、『執着 生きづらさの正体』(集英社クリエイティブ)、『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書)、『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました』(集英社クリエイティブ)など多数。

文芸批評家

浜崎洋介

はまさき ようすけ

1978年埼玉生まれ。雑誌『表現者クライテリオン』編集委員。京都大学大学院特定准教授。2022年『小林秀雄の「人生」論』(NHK出版新書)で、第31回山本七平賞奨励賞受賞。そのほかの著書に『福田恆存 思想の〈かたち〉イロニー・演技・言葉』(新曜社)、『反戦後論』(文藝春秋)、『三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか』(NHK出版)、『ぼんやりとした不安の近代日本』『小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える』『日本人の「作法」 その高貴さと卑小さについて』(いずれもビジネス社)がある。

同志社大学教授

吉田徹

よしだ とおる

1975年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門は比較政治学、ヨーロッパ政治。著書に『ミッテラン社会党の転換』(2008年、法政大学出版局)、『二大政党制批判論』(2009年、光文社新書)、『ポピュリズムを考える』(2011年、NHK出版)、『感情の政治学』(2014年、講談社)、『「野党」論』(2016年、ちくま新書)、『アフター・リベラル』(2020年、講談社現代新書)などがある。

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